新型コロナウイルス感染症拡大で激変する採用市場(1)

 “コロナショック”で世界中が大混乱・大激変の一年となった2020年――その2020年度(2021年卒)の就活戦線は、一部を除いてほぼ終わりを迎えたが、2022年卒の就活市場はどうなるのか? 本稿では、コロナ禍が21卒生の就職活動に及ぼした影響やそこに至る経緯を振り返りつつ、次年度以降に向けて改めて見えてきた“地殻変動”について考察する。(ダイヤモンド・セレクト「息子・娘を入れたい会社2021」編集部)

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2021」の巻頭特集記事「コロナ禍で大激震!“就活戦線”のいま、これから」の一部を転載したものです(加筆修正あり)。

コロナショックがあったが結果的には堅調な数字

 日本国内で新型コロナの陽性患者が初めて確認されたのは2020年1月16日のことだ。その後、2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の船内で集団感染が発生し、大騒ぎになった。ただ、この頃はまだ多くの日本人にとっては“対岸の火事”だったといえるだろう。

 様相が変わってきたのは、国内各地で感染者が確認されるようになった2月中旬からだ。2月27日には政府が全国の小・中・高校などに臨時休校を要請し、大学生をはじめとした就職活動にも急ブレーキがかかった。例年、3月1日から企業の合同説明会や個別説明会が開催されるのだが、それらがほぼすべて中止になったのだ。

 多くの就活生が「よし、これから」と思っていた矢先、企業と接触する機会が消滅した。前年までの常識や先輩たちから聞いていた方法がまったく通用しなくなり、不安と動揺が走った。

 一方、19年夏頃からインターンシップに積極的に参加し、早くから企業と接触していた学生にはコロナショック下でも内々定や内定が比較的スムーズに出た。まさに明暗が分かれたところだ。

 その後、会社説明会や採用面接はオンラインへと移行したが、スケジュールの遅れはいかんともしがたく、内定出しは例年に比べて、後ろ倒しになった。

 とはいえ、当初は戸惑いがあった学生側も企業側も、次第にこうした状況に馴れていった。多くの企業はすでに20年度(21年卒)の採用計画を固め終え、一部を見直した企業もあったが、2020年11月現在では、かつてのバブル崩壊後やリーマンショック後ほどの低い内定率に落ち込んでいるわけではない。

 コロナショックは社会全体に深刻な影響を与え続けているが、それに比べると、20年度(21年卒)の就活市場は意外に堅調だったといえるのではないだろうか。