NHKNHK改革の必要性が取り沙汰されている中で、「Eテレ売却論」が叩かれるのはなぜか Photo:PIXTA

高橋内閣官房参与の
「Eテレ売却論」が集中砲火のなぜ

 先週、内閣官房参与の高橋洋一嘉悦大学教授が週刊誌のインタビューなどで唱えた「Eテレ売却論」が、マスコミから叩かれた。

 たとえば12月3日の『朝日新聞』では、NHKの前田晃伸会長の「教育テレビはNHKらしさの1つの象徴だと思う。それを資産売却すればいいという話には全くならないと思う」という言葉を引用しつつ、嬉しそうに批判の声をかき集めた。

《SNS上では「Eテレが最も公共放送として能力を発揮している」「子育てで何度も助けられたから(売却論は)信じられない」などとの声が相次いでいる》(同上)

 もちろん、そういう声が存在するのは事実で、SNSでは「#Eテレのために受信料を払っている」「#Eテレ売却に反対します」というハッシュタグがつくられ、「民営化されたらいい番組が見られなくなる」などと、この案への不平不満が次々とつぶやかれている。

 筆者もEテレは好きなので、そのような方たちのお気持ちはよくわかる。が、その一方でちょっと気の毒な気もしている。「Eテレ愛」を利用され、まんまとマスコミに踊らされてしまっているからだ。

 高橋氏本人が、「『Eテレ売却論』を『番組全廃止』とすり替える、マスコミの『常套手段』」(現代ビジネス12月7日)で解説をしているように、今回注目されている「Eテレ売却」とは、あくまで周波数帯の売却であり、番組制作機能やコンテンツをどこかに売っぱらってしまえ、という話ではない。

 NHKは2つの地上波を持っているので、そのうちの1つを明け渡すことで、経営がスリム化して受信料も下がる。良質なEテレのコンテンツは、スマホやネットで視聴できるようになるので、むしろNHKやEテレばかり見るというファンにとってはメリットも多い話なのだ。

「ネットなんて冗談じゃない!テレビはちゃんとテレビで見させろ!」と怒る人もいるかもしれないが、今の地デジテレビはだいたいネットに繋がっている。電波を売っても、テレビでEテレを楽しむ方法はいくらでもあるのだ。