私たちの生活を支えるあらゆるモノをつくっているのが、製造業だ。業界研究をするにあたって、就活生は自動車やスマートフォン、食品といった製品をつくる「完成品メーカー」に注目しがちだが、それらの素材をつくる「素材メーカー」や製品に欠かせない部品をつくる「部品メーカー」など、製造業の範囲はとても広い。今回は、日本ではサービス業に次いで大きな産業である製造業について解説していこう。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
30年前、日本の製造業は花形だった
就活生の親世代が就職活動をしていた1990年代頃、商社や金融機関と並んで就活生からの人気が高かったのが、自動車メーカーや電機メーカーだ。79年にハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授が著した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』などで日本的経営がもてはやされた頃、特に世界から品質や安全性で高く評価されたのが日本の製造業だった。
当時は製品開発を担う理系学生に人気があるのはもちろん、文系学生からも人気が高かったという。しかし、それから30年。もちろん現在も高い人気を維持しているものの、以前に比べると存在感は低下している。
中でも人気を落としたのが、電機メーカーだろう。電機メーカーは90年代のバブル崩壊後から、海外メーカーの台頭、アナログからデジタルへの転換に乗り遅れたことで苦戦を強いられ、リーマンショック後にはBtoCからBtoBへ事業構造を変化させる企業も増えている。
例えば、携帯電話の分野では、フィーチャーフォンからスマートフォンへと世の中が移行する中で、日本の電機メーカーがその変化についていくことができず、あっという間にシェアをアップルやサムスンなどの海外メーカーに奪われてしまったのは誰もが知るところだ。
「今はサービス業やIT業界の市場規模の拡大を受けて、就職先の選択肢が増えてきている。以前であれば、製造業を目指していた文系人材がこうした業界に流れている動きもある」(リクルートキャリア 井上和真・製造業専門コンサルタント)
自動車メーカーは電機メーカーに比較すると引き続き高い人気を誇るが、2010年代以降、車が「所有から利用へ」、また「脱炭素社会の実現」を目指して脱ガソリン車の流れが強まる中で、大きくビジネスモデルを変革しなければならない時代に突入している。