商社,就活商社業界は、この30年で劇的な変化を遂げています Photo:PIXTA

就活生の中で最も人気の高い業界といえるのが、総合商社だ。だが、就活生の親世代が就職活動をしていた約30年前と現在を比較すると、総合商社のビジネスも、求められる人材像も実は大きく変わっていることが分かる。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)

商社は危機を何度も乗り越えた
日本特有の特異な業界

 伊藤忠商事は1858年に創業、三井物産は前身の旧三井物産が1876年に創業するなど、総合商社は歴史ある企業が多い。しかし、どの企業も現在まで決して順風満帆にビジネスを続けてきたわけではなかった。

「総合商社は、何度も存続の危機にありながらも絶え間ない自己変革を続けて、事業を続けてきた特異な業界といえる」

 こう語るのは、伊藤忠商事で22年間人事担当を務め、現在は主に商社で活躍することを目指す大学生の就活を支援する「THE BEYOND 成長を楽しもう」の創業者、佐野智弘氏だ。

「この数十年だけを見ても、総合商社はアメーバのように事業を拡大している」(佐野氏)

商社ビジネスの中心は
トレーディングから事業投資・経営へ

 では実際にこの数十年で、商社ビジネスはどのように変化したのだろうか。

 1980年代ごろ、大手総合商社とされていたのが、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、日商岩井、トーメン、ニチメン、兼松の9社だ。当時の商社ビジネスは、「トレーディング」が主体だった。資源(原油や鉄鉱石など)や原材料を輸入し、日本製品を輸出するという、海外との2国間取引によって、物の過不足を埋める機能を果たしていた。

 商社は、古くから海外とのネットワークを築いてきており、他の日本企業と比較しても情報の優位性を兼ね備えていた。そのため、大手メーカーも自前で輸出入を行うより商社にその機能を頼る部分が大きかった。また、当時は、トレーディングを通じたビジネスによる企業単体での売上高を、同業他社と競い合っていた。