部品・素材メーカーの立ち位置に変化
完成品メーカーの戦略パートナーへ

 そうした時代変化がある中で、存在感を高めているのが素材メーカーや部品メーカーだ。

 これまで部品メーカーや素材メーカーは主に、自動車や電機などの完成品メーカーのサプライヤー(下請け)としての役割を果たしてきた。しかし、「5、6年ほど前からこの両者の関係性に変化が生まれてきている」(井上コンサルタント)という。

「新しい付加価値をつくることで、部品・素材メーカーの立ち位置は『サプライヤー』から『戦略パートナー』へと変化しつつある。つまり、完成品メーカーとは並列・対等であり、協働していくことが求められるようになった」(井上コンサルタント)

 大きなきっかけは「VUCA(変動、不確実性、複雑、あいまい)」と呼ばれる時代に突入し、改善だけではなく、技術変革が求められるようになったこと。こちらは歴史がすでに長いが、東レがユニクロと強力なパートナーシップを築き、ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンといったヒット商品をつくり上げていることなどが良い例だろう。

 こうしたパートナーシップによって、素材メーカーや部品メーカーであっても、消費者目線に立って商品を開発する機会を得ることもできる。

 日本の完成品メーカーは確かに30年前に比べると衰退のイメージがあるが、素材メーカーや部品メーカーはグローバルでも活躍の幅を広げている。日本の製造業の主役は、完成品メーカーから部品・素材メーカーへと移りつつあるといってもいい。