同社は通信事業から年間約3兆2000億円の収益を得ており、それに対してコストは約2兆5000億円である。収益からコストを差し引いた部門利益は約7500億円だが、コストの大半はこうした設備関連(つまり固定費)なので、すぐに削減することは難しい。結果として、割安料金プランへの移行はそのまま利益の低下につながる。

 具体的にどの程度の減益となるのかは、ahamoに何割の利用者が移行するのかによって変わってくる(あるいは他社からどれだけ顧客を奪えるのかにもよる)。仮に他社からの獲得がなく、ドコモ内で2割がahamoに移行し、当該契約者の平均通信料収入が半分になったとすると、ドコモは約3000億円の営業収益を失う。

 ドコモは今回の値下げと前後して、NTT本体の完全子会社になる決定を行ったが、その理由は明白といってよいだろう。ドコモ単体では従来と同じレベルの利益を確保することができないので、NTT本体と一体化させ、全体として利益を稼ぐ戦略である。

 通信事業者の収益構造は各社ともほぼ同じなので、この話はKDDIにもソフトバンクにも当てはまる。今回の値下げは、各社が消耗戦に突入したことを意味しており、この負担は必ずどこかに波及すると考えた方がよい。では、今回の値引き分は最終的に誰が負担することになるのだろうか。

通信料値下げの
泥をかぶるのは誰か

 もっとも分かりやすいのは、通信会社の利益がそのまま低下して株価が下落し、損失を投資家が負担するという流れである。NTTドコモは12月25日に完全子会社化で上場廃止となるが、TOB(株式公開買い付け)実施価格での時価総額は約12兆6000億円である。同社のPER(株価収益率)などから単純計算すると、3000億円の減益となった場合、時価総額の約35%が消失する。つまり新料金プランによってドコモの株主は4兆3000億円もの金額を負担しなければならない。

 ドコモは上場廃止となるのでNTT本体が負担することになるが、KDDIとソフトバンクは引き続き株式市場に上場を続ける。安倍政権は公的年金の財政が苦しくなっていることから、年金の積立金運用を、安全第一の債券運用ではなく、リスクが高い株式運用に全面的に切り換えた。私たちの公的年金は3社に多額の投資を行っているので、間接的には年金受給者にも影響が及ぶ可能性が出てくる。

 もっともドコモは非上場化で直接的な株価の下落を回避するし、競合各社もみすみす株価を下落させるようなことはしないだろう。そうなると、別の部分で収益を補う話になるが、ここで真っ先に頭に浮かんでくるのが、他社に提供する回線利用料の引き上げである。