慶應三田会vs早稲田稲門会#12Photo:taa22/gettyimages

日本の産業界を動かす慶應義塾大学と早稲田大学の出身者。その影響力はどちらが大きいのか。特集『慶應三田会vs早稲田稲門会』(全16回)の#12では、慶應・早稲田出身の上場企業535社の社長の経営力を徹底比較した。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

因縁の「社長早慶戦」
社長の数では慶應が圧勝!

 私学最高峰を争う慶應義塾大学と早稲田大学。両校に通う学生は、学業においてもスポーツにおいても、切磋琢磨して互いに高め合うような“因縁のライバル”である。

 だが、「早慶戦」で早稲田大が慶應大と対等に渡り合えるのも学生時代まで。大学を卒業して社会人になると、戦況は一変する。

 というのも、ビジネスの世界に一歩足を踏み入れると、慶應人脈が産業界の要所に張り巡らされているからだ。その鍵を握るのが、会員数38万人を誇るOB組織「三田会」の存在である。慶應大の卒業生だけが余得にあずかることができる三田会の「組織力の高さ」「経済圏の広さ」に対して、埋め難いギャップを感じる早稲田大OBは少なくないだろう。

 実際に、産業界における慶應パワーの強さは群を抜いている。東京商工リサーチの調査によれば、上場企業の社長数(CEOや会長など代表者を含む。2020年初時点)で比較すると、慶應大出身者308人、早稲田大出身者227人で、慶應大が圧勝している(本稿の末尾で「慶應大出身社長がいる上場308社全リスト」を公開)。

 数の多さだけではない。慶應大出身社長には、そうそうたる人物が名を連ねている。

 例えば日本で最も有名な社長である、トヨタ自動車の豊田章男社長は慶應大OBだ。偶然なのかどうなのか、トヨタと資本提携を結ぶマツダの丸本明社長、SUBARUの中村知美社長も慶應大出身である。

 世界的に脱ガソリン車シフトが加速する中、エンジン車で個性を示してきたマツダとSUBARUがさらにトヨタとの距離を詰めるのか。“チームトヨタ”の将来が同窓社長の決断に委ねられている。

 トヨタもそうだが、慶應大出身社長がいる企業には、業界のリーディングカンパニーが多い。金融業界では三毛兼承・三菱UFJ銀行頭取、食品業界では磯崎功典・キリンホールディングス社長や新浪剛史・サントリー・ホールディングス社長。そして、小売業界では杉江俊彦・三越伊勢丹ホールディングス社長といった具合だ。

 また、錢高組の錢高久善社長、永谷園ホールディングスの永谷泰次郎社長のようにオーナー経営者が多いのも特徴である。

 これだけの実力経営者が主要業界に勢ぞろいしているので、慶應人脈が業界再編の起爆剤となることも少なくない。日本の産業界において、「慶應閥」の存在は比類なき地位を確立しているかのように見える。

 しかし、である。慶應大出身社長と早稲田大出身社長に関するデータをつぶさに分析すると、慶應大圧勝とは全く異なる「実像」が浮かび上がってきた。