私立最難関の一つである慶應義塾大学の入試という高いハードルを越えなくとも、三田会に入る方法がある。特集『慶應三田会vs早稲田稲門会』(全16回)の#6では、芸能人の大学院合格などでたびたび話題になる「学歴ロンダリング」の手口を追った。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
通信課程の卒業割合は10%も
40万円弱で手に入る「慶應卒」の称号
「慶應卒という肩書があるだけで、こんなにいいことがあるのかと驚いた」――。
こう話すのは、慶應義塾大学通信教育課程の卒業者である、不動産業界に勤める50代の吉田一郎さん(仮名)だ。
吉田さんは同志社大学を卒業後、サラリーマンとなった。だがコピーライターを目指すために「大学で文学を学びたい」と考え、選んだのが慶應大文学部の通信教育課程だった。
まず、入試がない。また関西に住んでいても、レポートの提出と全国各地で行われる試験で卒業ができる。他大学の学部を卒業していれば学士入学が可能になり、必修科目40単位(必修外国語を除く)が認定され、最短2年半で卒業できる。通信生であっても、卒業証書にそのことが記載されるわけではなく、卒業後の学位は通学生となんら変わりはない。
とはいえ通学生と違って大学のサポートがほとんど得られないため、レポートや卒業論文の作成でつまずく学生も多い。最長12年在籍できるにもかかわらず、通信生のうち卒業できる割合は全体の10%前後と非常に低い。吉田さんも卒業までに7年かかったという。また、通信課程が設置されているのは文・経済・法の3学部のみに限られている。
そんな制約があるにせよ、余りある恩恵がある。
まず通信課程は学費が安い。初年度は選考料1万円と入学金2万円が加わるが、登録料、教育費、教材費は合計で年間10万円。在籍所要年数を超えれば年6万円しかかからない。慶應大通信課程のホームページによると、学士入学の学費の総合計参考値は38万5000円だという。
そして何よりの恩恵は、絶大な信用力が手に入ることだ。吉田さんの「慶應大卒」パワーがさく裂したのは、会社を独立してからだった。