産業界をにぎわせるDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、会計の世界にも訪れている。ERP(統合基幹業務システム)のみならず、これを補完するような外資系事業者なども日本に続々と参入中だ。特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#12では、それぞれの目的に応じた具体的なツールや利用企業の声を一挙に紹介する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
ERPだけでない会計ツール
勢いに乗る“黒船”も上陸
「DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代」。こんな言葉が産業界に飛び交う中、コロナ禍を契機にIT投資を強める流れが一気に加速している。それは本特集のテーマである会計の世界も決して無縁ではない。というよりむしろ、日本企業の間で最も強化が必要な分野といってもいいほどだ。
何しろ、国内大企業およそ数千社が導入する最も代表的な会計ツール、独SAPのERP(統合基幹業務システム)のサポートが期限切れを迎える2025年は、会計分野の「2025年問題」として昨今クローズアップされてきた。約1年前に突如、SAPが支援期限を27年に延ばすと発表して一安心した関係者も多いかもしれないが、日本企業のグローバル展開が拡大の一途をたどる中、会計システムの改革を迫られる実情には何ら変わりない。
経理・財務業務に関わる人なら誰もが知るERPだが、実は会計ツールは決してそれだけではなく、これを補う国内外の新たなソフトが続々と登場している。ただ、新規参入組の会計クラウドサービスを手掛ける事業者からは「経理担当者は保守的なマインドが強く、そもそも現場が新たなツールの導入を避ける傾向にある」との声も。
誰もが知るある大手電機メーカーの財務本部長からは「昨年まで海外子会社の財務はエクセルで送られてきて、それを本社でまとめるための人材が必要だったが無駄でしかない。子会社側は負担が増えるので嫌がるが、本社で効率的な管理を行っていくため、ERPのグローバル統合などを進めている」とのエピソードもある。
これらの例から分かるように、現場が負担増につながるとして新ツールの活用を避けたがっても、全社的な会計力を強めていく上では上に立つ者のリーダーシップが問われる局面も想定される。
キャッシュ管理、リモート決算、予算管理、固定資産管理、経費管理……。次ページより、経理・財務から経営企画にまで業務がまたがる一連の用途別のツールについて、大企業向けか中小企業向けか、また経理・財務向けか経営企画向けかをまとめた一覧表を掲載する。
その多くは、大手ERPのように億円単位の投資や膨大な手間などを必要とせず、数百万円あれば使いこなせるものだ。中には、グローバルな一流企業が軒並み採用しているにもかかわらず、日本には上陸したばかりの“黒船”の姿も――。こうしたクラウドサービスを用いる企業の口コミと併せ、現場で活用が広がる国内外の最先端ツールを一挙に紹介していこう。