現場で役立つ会計術#13
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エクセルは使い方次第で、他社の財務戦略を分析したり、過去の数字から将来の計画を導き出したりできる「万能なツール」だ。俺のイタリアンは客の回転数が幾つになれば黒字になるのか?オリエンタルランドはなぜチケット代を値上げするのか?特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#13では、ひらめきではなく、数字から論理的に分析する方法を「Excel×ファイナンス」マスターの熊野整氏に伝授してもらった。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

どのKPIを選べばいいのか?シミュレーション
エクセルで簡単にできる相関分析

 会社や部署のKPI(重要業績評価指標)をどこに置くかで、経営戦略そのものが変わってくる。そのため、KPIの設定は慎重に決めなければならない。ただ、もし「どれをKPIにすると、どんな結果が出るのか?」のシミュレーションができるならば、失敗のリスクは減るだろう。

 そんなとき、シミュレーションに役立つツールが、多くのビジネスパーソンにとって身近な「エクセル」である。そこでこの記事では、エクセルを使用した企業研修やコンサルティングを行う「Excel×ファイナンス」のマスター・熊野整氏への取材を通し、エクセルで読み解ける企業分析を解説する。

回転数×客単価で勝負する立ち飲みイタリアン
数字の“ブレ幅”で赤字と黒字の分岐点が見える

 まず、かつての「俺のイタリアン」を例に挙げてみたい。現在は俺のイタリアンは着席式に変わっているが、スタート当初のビジネスモデルの場合、戦略とKPIの設定が分かりやすい。そこで、初期の俺のイタリアンを参考にしつつ、架空の「立ち飲みイタリアン」として、実際にエクセルでどのようなことが分析できるのか、頭の体操的に仮説を立ててみよう。「立ち飲み」形式にすることで、客の回転数を高め、安価なメニューでも利益を出す戦略だ。

 このように戦略がはっきりしている場合、「何回転で赤字/黒字になるのか?」「客単価がいくらだと赤字/黒字になるのか?」をエクセルで分析・検証できる。

 基本的に数字のシミュレーションというのは“ブレ幅”を見ることだ。「5回転のときにどうなるか」「客単価が5000円だとどうなるか」など、回転数と客単価の数字を動かして考えてみる。すると、「n回転だと赤字になりやすい」や「回転数が落ちるとどの程度利益が減るか」など具体的な数字の感覚が分かる。また、「客単価と回転数だとどちらが業績への影響が大きいか」など、財務リスクの大小も分かる。

 表のように、4回転なら材料費などのコストを上回るために、黒字、3回転ならトントン、2回転ならコストを下回り赤字となっている。これが“エクセル財務術”で判明した分岐点だ。

 決算書やホームページに掲載されている過去の数字をエクセルで分析すると、収益構造やKPI、将来の計画まで読み取れる。その際、「ひらめきや定性的な判断ではなく、数字を見て相関分析することが重要だ」と熊野氏は言う。

 次のページからはディズニーランドやシーを運営するオリエンタルランドの経営戦略をエクセルで分析していく。オリエンタルランドの公式サイトを見るだけで、「なぜテーマパークのチケットを値上げするのか?」という理由や将来の予測までできる。