現場で役立つ会計術#11
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このところ日本企業の間で、CFO(最高財務責任者)からCEO(最高経営責任者)に昇格する流れが広がりつつある。企業トップへの登竜門として重要性を増しているCFOだが、そもそも何が職務で、どのようなキャリアからCFOになれるのか。特集『現場で役立つ会計術』(全17回)の#11では、特集で取材した一流企業のCFOの見解を通じ、その実像を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

日本に「CFO→CEO」の流れ
今や企業トップの登竜門に

 ソニー、ルネサスエレクトロニクス、NEC……。過去数年、これら日本有数の大企業に共通して起こっていることがある。それは、CFO(最高財務責任者)がCEO(最高経営責任者)になる人事が行われたことだ。ソニーやルネサスではCFO経験者が社長に就任後、業績改善が進み、株価も上昇カーブを描いている。

 中でも直近の成功例の筆頭は、1995年に日本で初めてCFOを導入したソニーだろう。現在の吉田憲一郎会長兼社長CEOは2014年にソニーのCFOに就任後、事業再編などを行いビジネスモデルの転換に成功。18年から社長兼CEOとなり、かつての凋落からのV字回復を主導した。19年7月にはルネサスエレクトロニクスでCFOだった柴田英利氏が社長兼CEOに就任したほか、今年4月にはNECの森田隆之CFOがCEOに昇格する予定。大企業で立て続けにCFO出身者がトップとなるような人事は、これまであまり見られなかった現象だ。

 自身も米3Mの日本法人、スリーエム ジャパンの代表取締役副社長執行役員(CFO)を経て、昨年から同社社長へ昇格した昆政彦氏は、このようにCFOから企業トップが生まれる流れは「欧米企業の方が早かった」と指摘。日本でもこのところ「ROE(自己資本利益率)経営」などといわれてきた中で、「財務的な価値を重視する流れから、そうした見識を持った人材がCEOになるケースが増えてきたのではないか」と話す。

 何しろ企業の行方を左右する重要なポジションだけに、「スターCFO」を巡る世界の人材獲得合戦は熾烈を極める。例えば、米モルガン・スタンレーのCFOを務めていたルース・ポラット氏は15年、米グーグルの親会社アルファベットのCFOに引き抜かれたのだが、その報酬額はなんと3000万ドル超(当時のレートで約37億円)にも上ったほどだ。

 だが、実は経理・財務部門出身者がCFOとなるケースの多い日本では、実質的に“スーパー経理部長”のような役割しか果たしていないケースが少なくないのも実情だ。そこで次ページからは、CFOは本来いかなる職務を果たすべきなのか、本特集で取材した一流企業のCFOが実務経験を踏まえて語る「あるべき姿」を解説。併せて、日本で企業トップへの登竜門ともいうべき存在になりつつあるCFOへの「五大キャリアルート」についても明らかにしよう。