理解が広がれば開催への機運は高まる

朝日 いずれもとてもいいアイデアだと思います。スポーツ振興には、レベルの高い選手やチームの存在と、施設などのインフラ、その両方が必要です。前者をプロチームが、後者を行政が担うことによって、まさに共同でレガシーを残していくことができると思います。

 部活動に関しても、現場の教師の負担を減らすために、学校機能から部活機能を少しずつ離していこうという動きがあります。この東京オリンピック・パラリンピック大会をきっかけに、部活動を「地域の活動」にして、その活動に地元のトッププロの選手に関わっていただく。そのような変革は十分に可能だとも思います。まずは、さいたま市で試験的にやってみたいですね。

池田 ぜひやりましょう。さいたま市の清水勇人市長は、次世代型スポーツ施設の建設を公約に掲げていらして、私との対談でもその公約への固い意思を述べられています。コロナ禍によって建設時期が多少延びるかもしれませんが、いずれ造られることは間違いないと信じて私もブロンコスの再建に全力を注ぐ覚悟をしました。そのインフラを活用しながら、地域のプロチームと市民がスポーツを通じて街を元気にしていく。この大会をその取り組みのきっかけにできれば最高です。

池田 純池田 純(いけだ・じゅん)/早大卒業後、住友商事、博報堂勤務などを経て2007年に株式会社ディー・エヌ・エーに参画。2011年横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任。2016年まで5年間社長をつとめ、コミュニティボール化構想、横浜スタジアムのTOBの成立をはじめさまざまな改革を主導し、球団は5年間で単体での売り上げが52億円から110億円へ倍増し黒字化を実現した。退任後はスポーツ庁参与、明治大学学長特任補佐、日本ラグビーフットボール協会特任理事などを務め、2019年3月にさいたま市と連携してスポーツ政策を推進する一般社団法人さいたまスポーツコミッションの会長に就任した。また、現在有限会社プラスJ(https://plus-j.jp/)では、世界各国130以上のスタジアム・アリーナを視察してきた経験をもとに「スタジアム・アリーナミシュラン」として、独自の視点で評価・解説を行っている 著書に『常識の超え方』『最強のスポーツビジネス』(編著)など。

――五輪パワーが地域パワーになるという理解が広まっていけば、開催への機運も高まるかもしれませんね。

朝日 そう思います。地域の活性化に反対する人はいないし、オリンピック・パラリンピックのレガシーを残していくことに反対する人もいないでしょう。池田さんがおっしゃっていることは、その2つを結び付ける非常に分かりやすいアイデアだと思います。ぜひ持ち帰って具体化していきたいと思います。

池田 バスケに関して言うと、どのチームでも使える設備は地域の体育館しかまだありません。さいたま市にアリーナ型の次世代型スポーツ施設ができれば、まさに地元のクラブチームや部活動とプロチームの結節点になると思います。もちろん、地域の人々の楽しみの場所にもなるし、経済効果も生まれるでしょう。そこにオリンピック・パラリンピックのストーリーが加わることで、開催の意義はのちのちまで残っていくと思います。

朝日 スポーツ庁も、1年ほど前に発表した「スタジアム・アリーナ改革」構想の中で、スポーツ施設を多様な世代が集う交流拠点にするという方針を打ち出しています。池田さんは、民間の立場から見て、スタジアムやアリーナを造る場合に必要なことは何だと思われますか。

池田 スタジアムやアリーナは、投資に対するリターンが非常に少ないんです。まずは、税金の仕組みを変えることが必要だと思います。固定資産税をゼロに近いくらいにする思い切った施策が求められるのではないでしょうか。運営に関しては、プロスポーツチームが管理運営を担いながら、施設に付随したクラブチームをつくるなど、地域の子どもたちが参加できる仕組みを整備することです。フランスにはそういうシステムが各地にあって、部活動よりも地域のプロスポーツチームが運営する「クラブ」でスポーツに親しみ、スポーツの専門性を高めていくというシステムがあちこちに浸透していて、施設と地域を結び付ける工夫もさまざまにあります。コーチも、学校の先生ではないので、指導のレベルも格段に上がります。