格付機関のムーディーズ・ジャパン(以下、ムーディーズ)は2012年9月に、パナソニックの格付けを2段階、引き下げた(プレスリリース参照)。理由は「収益性の低迷とレバレッジの大幅な上昇を踏まえたものである」としている。ただし、「収益やキャッシュフロー、レバレッジを大幅に改善すると共に、事業競争力を改善」できた場合には、格付けに「上方向への圧力がかかる」とも記述している。

 上記のレポートは、要点が簡潔にまとめられており、一読しただけでその内容を理解できる優れものだ。日頃、何が書かれてあるのか、何度読み返しても理解できぬビジネス文書に悩まされているせいか、「さすがムーディーズだ」という読後感を抱いた。

 ただし、見方によっては、業績が悪化した他の企業でも使い回しができそうなレポートでもある。確かにこの中では、営業利益率に基づいた収益性分析、純有利子負債に関するレバレッジ、そしてEBITDAまで持ち出して、パナソニック固有の問題を炙り出している。できればもう一歩、踏み込んだ解説が欲しい。

 もちろん、格付機関やシンクタンクなどが、各社オリジナルの経営指標で分析を行なっていては、読者はとまどう。レポートの内容を多くの人に咀嚼(そしゃく)してもらうためには、世に広く知られた経営指標を用いるのが鉄則だ。

 しかし、本連載までもが、世に阿(おも)ねる必要はない。筆者オリジナルの収益性分析やキャッシュフロー分析を繰り出して、斜に構えた視点から、パナソニックの業績を眺めてみることにしよう。

パナソニックは
解散すべきなのか

 収益性分析に関しては、本連載で再三登場させている「タカダ式操業度分析」がある。今回は掲載しない。理由は、パナソニックの場合、その波形が大きく変動するからだ。同社の収益力回復については、捲土重来を期すことにしたい。

 代わりに、パナソニック、日立製作所、三菱電機の「自己資本利益率」の時系列推移を〔図表 1〕に掲げる。

 自己資本利益率は、ROE(Return On Equity)と表現される。〔図表 1〕を見ると、2008年のリーマン・ショック以降、3社とも大きく落ち込んでいる。その後、日立製作所と三菱電機は回復軌道に乗ったのに対し、パナソニックは再び落ち込んでいることがわかる。