世界の大口投資家の一角は、中国電子商取引大手アリババグループ傘下のフィンテック企業アント・グループの大型上場で巨額の利益を手に入れる寸前だった。だが、早期に換金できる機会は一転して消え、売却できないまま持ち株を抱える羽目に陥った。シルバーレイクやウォーバーグ・ピンカス、カーライル・グループ、ティー・ロウ・プライス・グループなど、世界の大手プライベート・エクイティ(PE)投資会社やミューチュアルファンド運用会社の一団は2018年、総額140億ドル(約1兆4600億円)相当のアントの資金調達ラウンドに参加した。アントはこのラウンドで、世界最高の評価額を誇るスタートアップ企業となった。調達総額のうち100億ドル余りは外国投資家が投じた。その際、アントがドル資金を調達するためにオフショアに設立したペーパーカンパニーの株式を購入するという異例の手法で投資を行った。背景には、同社が人気アプリ「アリペイ(支付宝)」の決済ライセンスを確実に取得するには、中国本土で会社登記を行う必要があったとの事情がある。一方、同社はこうした制約により、外国投資家から直接資金を調達する能力を制限された。