現在の顧客層は以前からバスケを見ている目の肥えた方たちなので、新たに出発した若いチームがにわかに勝てるはずはないことを知っているはずでしょう。そのようなファンにとって大事なことは、刹那の勝ち負けよりも、チームや選手がどう成長していくかであり、B3ならではの面白いバスケを楽しめるかであり、そうした自分の身近な街に再起した新生チームの変化と葛藤を「おらがこと」として感じてもらえるかどうか、だと私は考えています。
まだ弱いかもしれないけど、「おらが街のチーム」がもがき苦しみ、強い者に必死に立ち向かいながら、選手一人一人が、そしてチームが組織として強くなっていくさまに共感してもらえること。これが今最も重要なことです。そしてその成長を見守ることそのものをエンターテインメントとして楽しんでもらうことが今提供すべき価値だと思っています。
そこには、スポーツマンガを1巻から読むような楽しさがあると思います。『スラムダンク』の主人公である桜木花道が、バスケをまったく知らないところから徐々に成長していく姿を見るような楽しさです。
ブロンコスはまだ、リーゼント頭の桜木花道がまぐれで、ゴリこと赤木剛憲キャプテンごとダンクでゴールリングにボールをたたき付けた、そんな可能性の片りんを見せ続けていく段階です。そんな荒々しくて未成熟な楽しさを提供していきたいと思います。
逆に言えば、外国人選手頼みで、お茶を濁したようなバスケをするのではなく、来季を見据えて、ファンが身近に感じる日本人選手中心でどこまでやれるのかを突き詰めるべきです。それでどこまで成長できるのか。来季、そこに外国人選手を追加すればどのような化学反応が起こるのか。そういった次のチームをお客さまも想像して楽しめる。そんなチームづくりを進めていきたいと思います。
だから、今年は成長途上の選手中心で挑む荒々しいバスケットボールというテーマを重視して、勝つことには苦慮し葛藤することを私は覚悟しています。そして、まずはどうにか1勝して、「1勝の喜びと重み」を1巻から楽しんでくださるファンと選手と共に歓喜したいのです。