個人投資家と借り手を結ぶ投資手法「ソーシャルレンディング」は、利回りが高い割に手堅くリターンが得られるとの口コミで人気を集めている。しかし、その人気の裏には危うい実態が潜んでいた。特集『バブル相場の正体』(全12回)の最終回では、ソーシャルレンディングの危うい実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
重要事項説明書も契約約款も読まずに投資
異様な“クリック合戦”
募集開始まで、あと1分。目的のサイトを開いてパソコン画面の前で、右手の人さし指をスタンバイさせた。その姿は、まるで超人気アイドルのコンサートチケットを熱望するファンのようだ。
しかし、お目当ては超人気アイドルのコンサートチケットではない。ソーシャルレンディングのファンドである。
募集開始時刻が来ると、ページ更新のボタンをクリックし素早くキーボードをたたいて出資金額を入力する。重要事項説明書、契約約款をダウンロードしても、中身は読まずに「申し込み」ボタンをクリック。そして「確定」ボタンをクリックすると、契約完了となった。ここまでの所要時間、わずか数秒という超早業。通称“クリック合戦”だ。あっという間に、700人近い個人投資家から3億円を超える出資金が集まった。
個人投資家と借り手を結ぶ投資手法「ソーシャルレンディング」が、人気沸騰中である。
超低金利時代の昨今にあって、利回りが5~10%と比較的高いリターンが得られると、20~40代のサラリーマンを中心にした個人投資家の間で評判となっている。
ところが、である。今年2月、ソーシャルレンディング業界の信頼を揺るがす不祥事が飛び出した。これにより、個人投資家によるソーシャルレンディングへの熱狂が一気に冷める可能性が出てきたのだ。