証券サバイバル時代の台風の目となりそうなのが、SBIホールディングスの北尾吉孝社長だ。コロナ禍の「追い風」を受け、業界再編のトリガーを引くタイミングをうかがっている。特集『乱戦!証券サバイバル』(全13回)の#3は、北尾社長のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
コロナ禍でネオ証券化に加速
「手数料無料化は必ずやる」
――新型コロナウイルスの感染拡大はSBIHDにどのような影響を及ぼしたのか。
われわれにとって非常にポジティブな影響を与えている。口座数の急激な増加がその一つだ。とりわけ資産形成層がNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の口座を開設しているのは、コロナ禍で人々が将来の所得や雇用に不安を抱き始めたからだろう。
既にSBIの口座数は野村證券を抜いているが、これからどんどん引き離していく。
――ウィズコロナ時代の成長戦略をどう描く。
コロナ前から、オンラインでの日本株取引の売買手数料をゼロにするネオ証券化に向けて動いているが、これを一段と早める。次に実施するのは(初心者・若年層向けスマホ証券サービスの)「ネオモバ」の手数料無料化だ。
そのためにわれわれは、手数料収益への依存をできる限り減らす取り組みを続けている。M&Aを積極的に活用し、ホールセールや為替、仮想通貨といった事業の強化を進める。
手数料収益は4~6月期に増えたが、依存度を下げる方針に変わりはない。手数料をゼロにして顧客層をさらに拡大し、圧倒的な強みを発揮していく。こうした動きはコロナ前からの既定路線だが、コロナで加速度が増したというのが現状だ。
――4~6月期に各社とも手数料収入の比率が上がり、SBIも無料化を先延ばしするのではとの観測もある。