【ホテル】
インバウンド依存体質が露呈
国内個人客の取り込みがカギ
外食と並んでコロナ禍による外出自粛の影響を大きく受けているのがホテル業界だ。東京商工リサーチによれば、2020年1〜10月の宿泊業の倒産件数(負債1000万円以上)は105件(前年同期比81%増)に上っている。通年で100件を超えたのは13年(118件)以来、7年ぶりとなる。
この苦境を打開すべく、政府は予定通り7月から「Go To トラベル」キャンペーンを開始した。しかし立教大学ビジネスデザイン研究科の沢柳知彦特任教授は「その効果は一部の所にしか効いていない」と指摘する。どういうことか。
「個人レジャー客を取り込む超高級ホテルには、補助金を目いっぱい使おうとする客が集まったが、従来ビジネス客を取り込んできた価格の安いシティホテルやビジネスホテルには、キャンペーンの恩恵はほとんどない」(沢柳教授)
下図の折れ線グラフは主にビジネスホテルからなる全日本シティホテル連盟に加盟するホテルの客室利用率の推移だ。4月、5月は18%台まで低下し、その後上昇はしているものの9月時点で40%に満たない状態となっている。
同じデータを地域別に見てみると、東京や大阪は20〜30%台で低迷している一方、北陸は70%弱、東北もおよそ57%と健闘している。その理由について沢柳教授は「インバウンド客に依存していた地域(東京や大阪)ほど落ち込んだまま回復が鈍く、インバウンド客があまり多くなかった地方ほど回復が早い」と解説する。コロナ禍で、インバウンド客への過度な依存というホテル業界の課題が浮き彫りになった格好だ。
今後求められる人材像は?
こうした中、ホテル業界が取り組んでいるのが、現在持っているリソース(従業員、部屋、ホテルのブランド、顧客名簿)を組み合わせて別の需要を取りに行くことだ。例えば、シングルルームのベッドを取り払ってリモートワークの場所として利用してもらうとか、ホテルのレストランを使ってテイクアウトやフードデリバリーを行うことも可能だろう。
今後ホテル業界はどうなるのか。「おそらくホテルのマーケットは以前と同じ状態にはもう戻らない。だからこそ今後は、『マニュアル通りにできる人』ではなく『新規事業を企画しマニュアルを作れる人』が必要になる。また、従来はコンシェルジュのようなスペシャリストが求められていたが、今後はマルチタスクで、一人で何役もこなせる人が求められるようになるだろう」(沢柳教授)。