経営・戦略デザインラボ#スノーピーク

2015年に東証1部へと市場を移したスノーピーク。2020年12月期の連結業績は、売上高が前期比17.6%増の167億円、純利益が前期比2.5倍と、大幅な増収増益を達成し勢いに乗っています。会長の山井太さんが「ライフバリュー」経営について語る本シリーズ。第一回となる今回はズバリ、「キャンプはなぜ楽しいのか?」。その答えこそが「ライフバリュー」の本質ともいえるものでした。(聞き手/ダイヤモンド編集部 長谷川幸光)

日本人はこれまで圧倒的に
キャンプを体験してこなかった

――キャンプする人は日本で増加傾向にあると聞きました。

 2014年に我々がマザーズへ上場する時に投資家に説明する必要があったので、日本のキャンプ人口(過去1年以内に1泊以上のオートキャンプに参加したことのある人)はどれくらいいるのかを調べたところ、当時(2013年)で約750万人。今はもう少し増えて、860万人(2019年)になっているので、この6年で110万人位増えていることになります(参照:日本オートキャンプ協会『オートキャンプ白書2020』)。

 ただ、人口比でいうと、日本の人口の約6%だったのが、約7%となった。1年に1度もキャンプをやらないという人が94%から93%へと「たった1%」減っただけの話なんですね。逆に伸び代があるということでもあるのですが、日本人というのは、これまで圧倒的に、キャンプというものを体験してきませんでした。「アウトドア」といえば「山登り」のみだったんですね。

 例えばアメリカではキャンプ人口は50%。3億2000万人の人口のうち、その半数の1億6000万人が過去1年以内にキャンプをしています。キャンプ人口の期間の条件を「過去1年以内」ではなく「過去3年以内」にすれば、80%以上になるかもしれません。

 日本人は古来より自然を感じ、花鳥風月を愛でながら、独自の感性や日本文化というものを育んできました。しかし、明治以降、日本が近代化していく過程の中で、自然から距離を置くようになってしまったんだと思います。

 アメリカはというと、東海岸にヨーロッパから移民が来て、ものすごい距離をキャンプしながら西海岸まで「未開拓地」を旅している。そのあたりのたどってきた歴史の違いというのはあるかもしれません。

――そもそも、なぜキャンプは楽しいのでしょうか?