「meviy」の部品設計データから部品調達ができる「meviy」によって製作された部品の例。meviyは「第9回 ロボット賞 日本機械工業連合会会長賞」も受賞した 写真提供:ミスミ

製造業向け商品のカタログ・ウェブ通販で知られ、“製造部品のアマゾン”に例えられるミスミ。2010年代後半には、デジタル技術を駆使し、設計データから部品調達が可能なオンラインサービス「meviy」を立ち上げた。製造業が長らく抱えてきた調達時間に関わる課題と、meviyリリースの背景について取り上げた前編に続き、後編では、そのイノベーション実現の裏側と、meviyによってもたらされた製造業のDXの詳細を紹介する。(編集・ライター ムコハタワカコ)

※前編「『製造部品のアマゾン』ミスミのDX革命、製造業の生産性向上を阻む三重苦を解決」はこちら

独自設計の図面品でも
納期短縮を実現した新規事業「meviy」

吉田光伸吉田光伸(よしだ・みつのぶ)
株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 兼 ID企業体社長
日本電信電話株式会社(NTT)へ入社後、日本オラクル株式会社を経て、2008年から株式会社ミスミグループ本社へ参画。 事業責任者として国内事業の再構築・中国事業の成長加速を経て、ミスミグループ内の新規事業である「meviy」(メヴィー)の立ち上げに従事。 2018年よりmeviy事業を展開するID企業体を設立、企業体社長に就任。製造業のDXを推進する革新的なものづくりプラットフォームとしてmeviyの成長を牽引。 インターネット黎明期から一貫して「デジタル」を活用した数多くの新事業の立ち上げ、事業責任者としての経歴・実績を持つ。
写真提供:ミスミ

 1963年設立のミスミグループ(以下、ミスミ)は、機械部品の商社として創業以来、ものづくりの現場で必要な生産間接材を製造業界へ供給し続けてきた。1977年には、カタログによる部品販売を開始。ものづくりにおける部品調達の課題に対し、部品の標準化と規格品のカタログ販売で応えてきた。

 規格品に加えて「半製品」をそろえることで、大ロット生産による低コスト化と、小ロットの部品の確実で短い納期を同時に実現したミスミは、顧客企業の製品を構成する部品の約半数をカバー。残りの半数、独自に設計が必要な「図面品」についても、いかに短納期で納品できるか、研究開発を進めてきた。

 その結果、2010年代半ばごろから展開する新規事業が、設計データから部品調達ができるオンラインサービス「meviy(メヴィー)」だ。2018年からは製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するものづくりプラットフォームとしてmeviyを展開すべく、ID企業体(社内カンパニー)を設立し、事業が進められている。

 meviy事業をけん引するのは、ミスミ常務執行役員 兼 ID企業体社長の吉田光伸氏。サービスの立ち上げから現在に至るまで、meviyの成長を担ってきた吉田氏は「meviyはミスミだけでなく、製造業全体のDXを目的としている」と語る。