スーパーセンタートライアル長沼店
スーパーセンタートライアル長沼店。実店舗にAIカメラやスマートショッピングカートを設置するなど、DXを小売業で具現化させている Photo by Mayumi Sakai

新型コロナウイルスの影響で一変した小売業界の顧客のトレンド。その変化にAIカメラやスマートショッピングカートなどによるDXでいち早く対応し続けているのが、九州を中心にディスカウントスーパーを展開するトライアルグループだ。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、トライアルグループRetail AI 代表取締役社長の永田洋幸氏に、DX実現に必要な人と組織のあり方、顧客との関係づくりについて聞く。

コロナで大きく変化する顧客の課題に
DXで立ち向かうトライアル

 新型コロナウイルス感染症は、企業経営にもさまざまな影響を与えています。旅行業、飲食業など全般的に苦境にある業界もあれば、Eコマースなど、外出を控える動きの中で業績を伸ばした業界もありました。

 小売業では、アパレルや百貨店などは軒並み苦戦を強いられています。一方、スーパーマーケット業界では、食品を中心とした巣ごもり消費で昨年より売り上げを伸ばした企業もあれば、衣料品・雑貨なども扱う大手総合スーパーなどでは3~5月の外出自粛期間中、昨年比でマイナス10%以上の売上減となった企業もあります。

 何がこの明暗を分けたのか。ひとつには、新型コロナ感染拡大によって、購買のトレンドが大きく変わり、売れ筋、勝ち筋が変わったことが挙げられます。通常、流通業界では季節変動なども見込み、前年以前の同月・同週の傾向を参照して、売れ筋商品や売り上げを予測します。しかし、今年は昨年までとは条件があまりにも違いすぎて、これまで通用していた経験則による需要予測は、新型コロナの影響で意味を成さなくなりました。

 事業における「プロダクトビジョン」と「プロダクト」との関係から、この状況を少し説明してみましょう。プロダクトビジョンとは「ユーザーは誰か」を見極め、「そのユーザーをどんな状態にしたいか」を目的に定めるもの。そして、ユーザーの課題を解決するための手段として、事業やプロダクトを用意する、というのがセオリーです。

プロダクトビジョンとプロダクト
(C)及川卓也 2020 禁無断転載
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 小売業においても、会社として「社会のどんな課題を解決することで、収益を上げたいか」というビジョンがあって、それに対応して事業があるという点がこれに共通しています。自分たちのターゲットであるユーザーの課題を、例えばコンビニエンスストアであれば、24時間365日、マス目のようにあちこちに店舗を設置することで解決しようとしているわけです。

 ところが新型コロナの影響で、顧客の課題は全く変わってしまいました。となると、企業は今ある事業・プロダクトに固執するのではなく、「自分たちが何をやりたい会社だったのか」にきちんと立ち返って、その上でユーザーを理解し、課題を発見して、その課題解決のために自分たちが何ができるかを考えなければなりません。

プロダクトビジョンとプロダクトの見直し
(C)及川卓也 2020 禁無断転載
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 変化の大きい今のような状況下でこれを実現するためには、仮説検証のサイクルをスピードを上げて回していく必要があります。これをデジタルトランスフォーメーション(DX)により実現しようとしているのが、九州を中心にスマートストアを展開するトライアルグループと、グループ傘下で流通業のためのIoTソリューションなどを開発するRetail AI(リテールAI)です。

 トライアルでは実店舗にリテールAIカメラやスマートショッピングカート、デジタルサイネージを設置。売り場の管理や顧客の購買行動の分析、販促など、流通の現場でIoTとビッグデータを活用したDXを図っています。今回は、トライアルグループ Retail AI 代表取締役社長の永田洋幸氏に取材し、DX実現に必要な人と組織のあり方、顧客との関係づくりについて伺いました。