写真提供:サッポロドラッグストアー(サツドラ)
新型コロナウイルスへの対応において、企業はスピードと適切さの両方を同時に求められている。北海道を中心にドラッグストアチェーンを展開するサッポロドラッグストアー(サツドラ)はマスク不足の折、開店時の販売中止をいち早く表明するなどスピーディーな対応で話題にもなった。その陰には、新型コロナ以前からの積極的なIT活用とシステム内製化への取り組みがあった。(編集・ライター ムコハタワカコ)
注目のローカルドラッグストア
IT活用成功の秘訣はPOS内製化にあり
北海道を中心にドラッグストアなど約200店舗をチェーン展開するサッポロドラッグストアー(サツドラ)。新型コロナの感染拡大でマスク不足が社会問題となっていた2020年4月、全店でマスク・消毒液などの開店時の販売をいち早く中止するとTwitterで発信し、話題となった。スピーディーな対応の裏には、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的な同社の取り組みがある。
同社は地域共通ポイント「EZOCA」導入に伴い、2013年に販売データを管理するPOSシステムの内製化を決断。そして、クラウドと連動したPOSの開発・導入により2014年5月のEZOCA開始に対応し、その後も販促・決済機能の追加を行ってきた。
こうしたドラッグストアの中では先駆的な取り組みを主導してきたのは、サッポロドラッグストアー業務システム部IT開発マネジャーおよびサツドラホールディングス傘下でPOSシステム開発事業を営むGRIT WORKSの取締役副社長を務める小野寺雅樹氏だ。
サツドラでは現在に至るまでに、インバウンド需要増に合わせた免税のパスポート対応、各種電子マネーを含む決済対応にも早期に取り組んできた。そのほか、リアルタイム在庫エンジンなど、基幹システムとの連携を見据えた開発も順次進めている。
「AI活用やOMO(Online Merges with Offline)、DXに関して、まだ目を引くような大きな事例はない。システム内製はできていても、どれも地味なものばかり」と小野寺氏は話す。だがサツドラのように、DXの基盤となるPOSシステムの内製化、クラウド化に実際に踏み切れている小売りプレーヤーは日本ではそう多くない。
「システム内製の地味な部分が、経営陣のやりたいことを実現するキャンバスになり、スピードを持って進めるための基盤になる」と語る小野寺氏。POSシステム内製化、クラウド化における工夫や社内での反響など、小野寺氏への取材から、サツドラが小売業におけるIT活用を成功させている秘訣をひもとく。