バブルは「借り入れによって、投資が過剰に膨らむ」ことによって起こる資産価格の高騰現象だ。1980年代後半に発生した日本のバブルを振り返ると、例えば金融・運用業ではない事業会社の「財テク」運用では、信託銀行による「バックファイナンス付き」の「ファントラ」(「ファンドトラスト」の略称。信託勘定で資金を預かって信託銀行自身が運用する仕組み。多くの案件に「握り」と称する違法な利回り保証が付いていた)のような仕組みで、投資が過剰に膨らんでいた。不動産では、銀行同士が競いながら担保の条件を緩くして不動産開発融資を増やしていた。

「借り入れによる投資」は自己資金よりも大きな投資ができるのだが、投資が裏目に出たときに含み損をこらえることが難しい、「弱いポジション」だ。アルケゴスの場合も、追加担保を差し入れることができなくなると、ポジションを強制処分されてしまった。

 バブルの時期にあっては多くの場合、「借り入れを伴う投資」を促す何らかの仕組みが開発されたり、脚光を浴びたりする。

 現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある。

 TRSは金融機関にとっても投資家にとっても大きなリスクを扱う上で都合のいい面のある仕組みだし、「SPAC」も運営者にとって有利な条件で資金調達ができるので歯止めが掛かりにくい。

 もっとも、日本のバブル期のファントラにしても、後にサブプライム問題を引き起こす証券化商品にしても、多くの場合は借り入れを伴う資金を動員して過剰な投資に向かわせる仕組みであることは間違いないのだが、広く使われるようになって「直ちに」バブル崩壊を引き起こしたわけではない。

 投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう。

アルケゴスショックの論点(3)
野村HDの株式評価に対する「考え方」

 さて、本件では投資家にもう一つお伝えしておきたいことがある。それは、本件の野村HDのような場合に、株価について評価する際の「考え方」だ。