この状況を、スペインが面白く感じているはずはなく、目と鼻の先にある元・自国領を返還してもらうため、長年、イギリスや国際世論に訴えてきた。しかし、イギリスは首を縦に振らず、スペインを悩ませ続けてきたのである。

現地住民はほとんどが
イギリスへの帰属を望んでいる

 ではなぜ、イギリスは本国から遠く離れた小さな土地であるジブラルタルを手放そうとしないのだろうか? その理由のひとつは軍事的な価値が高いからである。

 ジブラルタル海峡は、地中海と大西洋を結ぶ交通の要衝。北岸にはイギリス海軍が駐留しており、有事があれば、ここからいつでも出撃することができる。また、アフリカ大陸との距離が約14キロしかないから、いざとなれば海峡を封鎖して船の航行を妨げることもできる。

 さらにジブラルタルを訪れる観光客が多く、彼らがショッピングなどで落とすお金の利益も大きい。

 このジブラルタルの帰属問題が原因で、イギリスとスペインの関係が悪化することもあった。1969年にはスペインが国境封鎖を行なっている。

 スペインがEUに加盟するのを機に、1985年に封鎖は解除されたが、その後も両国は何度も衝突。2016年にイギリスがEU離脱(ブレグジット)を決めた際にも帰属問題が過熱した。

 先行きの見えないジブラルタル論争。ただし、現地住民はほとんどがイギリスへの帰属を望んでいる。2002年の住民投票でも99%の人々が両国の共同統治に反対しているし、イギリスも簡単に手放す気はない。ブレグジットを機に、事態が変わるかどうか注目が集まる。

“敵国”だったキューバ内に
なぜ米軍基地があるのか

 アメリカとキューバといえば、長年、犬猿の仲として知られていた。東西冷戦時代、両国は国交を断絶。1962年にはカストロ議長率いるキューバが、自国でのソ連のミサイル基地建設を容認したため、アメリカが激怒し、核戦争の一歩手前まで進んでしまった。いわゆるキューバ危機である。

 そのキューバの国内に、なぜかアメリカ海軍の基地がある。同国東部に位置するグアンタナモ基地だ。