電力業界の西の雄、関西電力が水素社会で主役を張るという壮大な野望を抱いている。切り札としているのは、関電が“宝”としている原子力発電所である。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#3では、関電が温める起死回生シナリオに迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
関電が水素社会で主役を張る!
決断を後押ししたある男の存在とは
菅義偉首相が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言してから1カ月余りが過ぎた20年12月のある日。関西電力の森本孝社長は、同社本店の応接室で、ある男と向き合っていた。
「原子力で水素を作りましょう」。その男が放った言葉に森本社長はうなり、渋い表情を作った。