1100兆円の水素バブル#5提供:ジェラ

水素に窒素を加えて製造されるアンモニアを発電燃料として着目したのが、東京電力と中部電力の火力発電部門と燃料調達部門が統合した国内最大の発電事業者、ジェラである。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#5では、水素よりアンモニアが“本命”となる可能性を秘めている理由に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ジェラが掲げる火力発電の脱炭素化
目玉は水素ではなくアンモニア

 菅義偉首相が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した20年10月26日より約2週間前のこと。まるで菅首相の動きを察知していたかのように、国内最大の発電会社が脱炭素へとかじを切ったのだった。

 東京電力(当時)と中部電力の火力発電部門と燃料調達部門が統合して誕生したジェラは、50年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質ゼロにする経営ビジョンを打ち出した。大きな柱の一つとしたのは、ジェラが保有する石炭火力発電所のCO2排出量をゼロにするというものだ。

 CO2排出量ゼロに向けて非効率な石炭火力発電所を30年までに全て廃止するのに加え、大きな切り札として用いるのは、水素ではない。あの、ツンとする強烈な臭いを放つアンモニアである。

 高効率な石炭火力発電所で、CO2を排出しないアンモニアを発電燃料として石炭に混ぜて活用し、徐々にアンモニアを混ぜる割合を増やして最終的にアンモニア火力発電所へ置き換える。20年代前半には愛知県の碧南火力発電所で実証実験を始める運びだ。

 菅首相がカーボンニュートラルを宣言して以降、あらゆる業界がアンモニアではなく水素にたかり、水素はバブルの様相を呈している。

 菅首相のカーボンニュートラル宣言より前に脱炭素へかじを切ったジェラは、水素バブルを読み違えたのだろうか。