絶対に近寄ってはいけない「もうけその1」
レバレッジでもうかった

 個人のお金持ちからヘッジファンドの経営者に至るまで、レバレッジを掛けた投資、すなわち実質的に借り入れを伴う投資が結果的に成功して大金持ちになった人は数多い。もっとも、後に触れるが、ヘッジファンドの場合はレバレッジ以外に別の「仕掛け」の役割が大きい。

 個人のお金持ちには、不動産で財をなした人が少なくない。不動産は担保物権が具体的なので個人でも比較的低利の借金を利用しやすく、大きな金額の借金と投資ができてお金持ちになるパターンがある。

 安易なマネー本や不動産のセールスマンが言うように、「家賃利回り>借入金利」なら不動産は利益をもたらすプラスの資産なのだ、というほど話は単純ではない。しかし、次々にローンを借りて不動産投資を膨らましただけの「欲張り父さん」のような人が、「結果的に」お金持ちになることはある。

 その過程では大きなリスクと無駄な手数料の支払いがあったはずなので、うらやましがってまねをしてはいけない。真に着実にもうかるのは、一見もうけ話らしき案件を売り歩くセールスマンだ。

 借金も、(1)良い利回りを見込める資金の使い道があって、(2)十分返せる規模で、(3)金利が高くないものであれば、利用していけないというものではない。

(2)については、普通の人は返済の算段を心配する方がいいが、野心的な事業家の場合「借金とは、借り手が心配するものではなく、貸し手が心配するものだ」というくらいに考える人もいる。その度胸は時に功を奏する。

 しかし、今般話題になったアルケゴスの場合は、集中投資の行き先がまずかったようだ。「相場を当て続けることはできない」という原則と、「レバレッジによるリスク拡大」が悪く重なった例だった。

 素晴らしいテクノロジーで大もうけしているように見えて、実際には数十倍のレバレッジでリスクを取っていたと後からもうけの「種」が分かるようなケースもある。かつてノーベル賞受賞学者などを巻き込んで設立され、後に破綻した米ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)がその典型だ。

 うますぎるもうけ話の裏には「大きなレバレッジが隠れていないか?」という疑いが欠かせない。