「たまごっちは、当時のトレンドリーダーだった女子高生に向けて作られた携帯型育成玩具でした。そのコンセプトがキレイにはまって、女子高生から火がつき、幅広い層に広がっていったようです。流行は、ある一定の需要を超えると、年齢やゲームの内容とは関係なく『たまごっちを持っていること』がステータスになるので、大人も『遊んでみたい』という購買意欲につながった可能性は高いですね」(安田氏)

 初代たまごっち以降も「新種発見!!たまごっち」や「てんしっちのたまごっち」など、さまざまな後続機が登場した。海外でもブームを巻き起こし、約2年の間に全世界で約4000万個を売り上げたという。名実ともに社会現象になったが、98年後半には第1次ブームに陰りが見えはじめる。

「多くの人が買いたいのに買えない状況を解消するために、バンダイでもたまごっちをたくさん生産しました。しかし、あるタイミングから供給が需要を上回ってしまったんです。手に入らないと『欲しい』という衝動が強まるけど、売り場にたくさん並んでいるのを見ると、その衝動はなくなるんですよね。その結果、大きな赤字と大量の在庫を抱えてしまいました」(同)

 一大ブームから一転、在庫の山を抱えてしまったバンダイ。90年代の終わりとともに後続機の開発、販売を終了したという。すさまじい人気を誇った「たまごっち」は、一度販売を終了していたのだ。

「一時期はブームになっても、需要がないとわかった瞬間に生産をやめるケースは珍しくないです。見切りをつける早さは、バンダイの特徴かもしれません。ただ、改めてターゲットやコンセプトを変える商品もあるので、当時は『女子高生に向けたキーチェーンガジェット』というコンセプトを離れる、という判断をしたんだと思います」(同)

顧客ターゲットの変更で
再び人気を獲得

「携帯育成デジタルペット」という新たな市場を切り開いたたまごっちの功績は大きかったものの後続機は作られず、熱狂的なブームは過去のものとなった。

 だが、そんな折、同社の開発担当者がある噂を耳にしたという。