「12歳からのワクチンの治験はすでに進んでいます。3月16日には、アメリカのモデルナ社が生後6カ月以上の子どもへのワクチン投与の治験を始めました。4月にはファイザー社も続きます。アメリカ小児科学会も子どもへのワクチン接種について積極的な姿勢を示しています(※1)。海外での治験が進み、ワクチンが子どもにも安全かつ効果があるということがわかれば、まず海外から、そして日本でも子どもへのワクチン接種が始まるでしょう。ただ、いつから子どもにワクチン接種ができるかは、はっきりとわかりません」

――第4波も現実味を帯びてきて、子どもへの感染も心配です。

「わかっているのは、日本では10歳未満の小児の約1万人、10歳代の小児の約2万人が新型コロナに感染しましたが、亡くなられた子どもの報告がないことです(2021年2月23日時点)。子どもが高齢者に比べて重症化しにくいのは間違いないのです。そのため、感染の危険がある医療従事者、重症化しやすい高齢者という危険度の高い順に接種が行われるのは、とても理にかなっています」

――とはいえ、子どもは学校や幼稚園、保育園などで集団生活をしています。家庭内感染のリスクもあります。

「学校などで子どもから子どもに新型コロナウイルスが感染することはあまり多くないとする論文は複数あります(※2-4)。リスクとなるのはやはり家庭内で、特に親から子どもに感染するケースでしょう。日本小児科学会の調査でも子どもの感染の8割が家族からの伝播であり、特に父親から感染するケースが多いことが分かっています」

――感染に特に注意すべきなのはどんな子どもたちですか。

「子どもは重症化しにくいと先ほど言いましたが、6歳以上の子どもでは“多系統炎症性症候群(MIS-C)”という全身性の炎症が起きることがまれにありますので、心配がないとは言えません。また、ダウン症候群、脳性麻痺、免疫不全状態、慢性肺疾患、慢性心疾患、気管切開を受けている子どもなどは重症化リスクが高いと報告されています(※5)。子どもの接種が始まるとすると、基礎疾患のある子どもや学童期以降の子どもから、段階的に始まるということになるでしょう」

――それ以外の、リスクが低い幼児にはワクチン接種は必要ないということでしょうか。

「そういうわけではありません。この年代にワクチン接種が必要だとする理由は、風疹の予防接種の考え方と同じです。子どもが風疹にかかっても三日ばしかと呼ばれているくらいで多くが重症化しませんが、妊婦さんがかかると胎児の成育に影響が出る可能性があります。子どもが媒介となって妊婦さんにうつさないために風疹の予防接種をするわけです。子どもがコロナにかかっても無症状という場合も多いので、子どもが媒介とならないためにも、また、社会からコロナウイルスを根絶させるとなると、リスクが低い幼児にもワクチン接種が必要になります」