旅客需要の蒸発で米ボーイングが2020年12月期、巨額赤字を計上した。その余波を受けるのが三菱重工業、川崎重工業、IHIの「航空3重工」だ。機体の分担製造事業にしても航空機エンジンの分担製造事業にしても、日本の民間航空機関連ビジネスはボーイングなしには語れない。しかし、この3社は事業範囲がとてつもなく広い。特集『戦慄のK字決算』(全17回)の#10では、ボーイングの浮沈のみでは測れない3社の将来業績について追った。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
足元で旅客需要が増加していても
日本の航空機産業はすぐには回復しない
新型コロナウイルスのワクチン接種の増加――。コロナの脅威は依然として収まりそうにないが、これにエアライン各社は一筋の光を見いだしているに違いない。
実際に、ワクチン接種が進む米国では航空旅客需要が上向いている。米デルタ航空では3月、航空券の購入と予約が増えたことで1日当たりの現金流出入がようやくプラスに転じた。同社のエド・バスティアン最高経営責任者は4月15日、「旅行者は日常生活を取り戻しつつある」と語った。このままいけば2021年7~9月期は黒字になる見通しだ。
しかし、である。米市場の回復が見えていても、日本における民間航空機関連ビジネスの先行きを楽観する関係者はまずいない。三菱重工業、川崎重工業、IHIの「航空3重工」に代表される日本の航空機産業界は、二大完成機メーカーの1社である米国の“国策企業”、ボーイングとの結び付きが強いのに、だ。
あるボーイング納入メーカーの幹部は、「日本の航空機産業は今年中に持ち直すどころか、業績の底は来年になりそうだ。どんなに強気の経営者でも、本格的に回復するのは23年だと予測している」と、諦め顔で語る。
国内航空機産業が、「ボーイングショック」をはじめとする民間航空機関連ビジネスの落ち込みから、なかなか復調できないのはなぜなのか。コロナ禍で日本企業の業績が「K字」に二極化する中、航空3重工の勝ち組、負け組はどう決まるのか。