化粧品と並んで医薬品が不振
外出自粛とインバウンド需要消滅が要因

 今回は調査会社インテージが実施したスーパーマーケットやドラッグストアなど約4000店舗の販売データを利用。まずは1年前と比べて売れなくなった商品のランキング30を見ていこう。

 化粧品が販売不振といわれている通りに、売れなくなった商品トップ30のうち化粧品が11品目を占めている。

 冒頭の女性のようにマスクの下に隠れる部分の化粧品の落ち込みは激しく、ワースト1位の口紅は41.8%(前年比、以下同)。また3位のほほべには62.7%、5位のファンデーションは67.8%だった。マスク着用の日々が続く限り、このカテゴリーは苦境のままになりそうだ。

 化粧品と並んで落ち込みが激しいのが医薬品で、売れなかった商品トップ30に10品目がランクインした。医薬品の販売激減の要因は、外出自粛とインバウンド需要蒸発の二つに分けられる。

 前者に該当するのは、2位で酔い止め薬などの鎮暈(ちんうん)剤が56.3%、7位の風邪薬などの総合感冒薬が76.1%、13位のコンタクト用剤の84.5%など。

 後者は4位の強心剤(62.8%)、8位鎮咳去痰剤(76.6%)、11位ビタミンB1剤(83.3%)、22位目薬(89.8%)などだ。「主に中国人のインバウンド需要によって支えられていた」(インテージの木地利光氏)といい、インバウンドの数が回復するまで状況は好転しなさそうだ。

アリナミンが足元で販売好調
新CMに加え、「社名変更」が寄与

 不調カテゴリーでも、足元で販売が好調となっている商品がある。それがビタミンB1剤の「アリナミン」(アリナミン製薬)だ。

 コロナ禍以前、アリナミン購入者のうちインバウンド比率は2~3割と大きなウエートを占め、中でも「アリナミンEXプラス」は、インバウンドが購入するOTC(Over The Counter。医師の処方箋なしで購入できる)医薬品の売り上げで断トツだったという。

 インバウンド需要の蒸発で、20年3月は売り上げが2割減(前年同月比)だったというが、21年3月は4割増(同)になったという。21年3月は19年3月と比較しても5%の販売増だったといい、インバウンドの消失分を国内の消費者だけで補うことに成功した。

 アリナミンの担当者によれば、20年8月の新CMを流した直後から、小容量タイプの販売が急増したという。その後は、大容量タイプの販売が増えており、「小容量でトライアルした人が継続服用を始めた」といい、21年3月の好調にもつながっている。

 ただ、足元でのアリナミン好調の要因は、新CMの影響だけではないという。それは“脱タケダ”だ。

 従来アリナミンを手掛けていたのは武田薬品工業の大衆薬子会社、武田コンシューマーヘルスケアだった。そして武田薬品は21年3月、米投資ファンド・ブラックストーンにこの子会社を売却した。

 売却に伴い、社名も武田コンシューマーヘルスケアからアリナミン製薬に変わった。武田薬品が売却を公表した20年の後半、ブラックストーンの傘下入りの準備を子会社内で進めていたが、「意思決定のスピードが速くなる」などの変化があったという。

 昔はCM制作など費用のかかることは、親会社だった武田薬品の承認が必要だった。これによって施策のスピード感に欠け、投資の優先順位も医療用医薬品の下に置かれていた。

 これが武田薬品から離れたことで、広告施策などを素早く進めることができるようになったほか、「コンシューマー向け商品の投資の優先順位が上がった」(アリナミン担当者)などの効果が表れた。

 脱タケダ効果でアリナミンの売れ行きが伸びていけば、ビタミンB1剤は21年の成長商品に仲間入りするかもしれない。