米ドルは日本のインフレに強い

 米ドルの価格を決める要因も数多いが、最も基本的な要因は、日米の物価が等しくなる、ということである。例えば1ドル=1円であれば、米国の方が物価が安いので、円をドルに換えて米国から物を輸入する日本人が増え、ドル買い需要でドルが値上がりするはずだ。

 日米の物価の一致を考えると、米ドルの価格は、日本がインフレになると値上がりする傾向にあるといえる。日本の物価が2倍になれば、米ドルの価格が2倍になる力が働くはずだからだ。

 したがって、長期の資産運用におけるリスクとして日本のインフレを考えた場合には、米ドルを持っておくことがリスクヘッジとなるはずだ。

 もっとも、米国がインフレになる可能性もある。米国の物価が2倍になった場合には、米ドルの価格は半分になってしまう、というのが上記の理屈であるから、米国でのインフレのリスクを考えると、むしろ米ドルはリスク資産ということになってしまう。

 したがって、米国のインフレのリスクまで考えるのであれば、米国の株式を保有しておくことがリスク回避の観点からは望ましい、ということになるだろう。

 米国がインフレになれば、米ドルが値下がりした分だけ米国株が値上がりするので、日本円換算で見た資産額には、基本的に影響がないという理屈になる。日本がインフレになっても、米ドルが値上がりするので、日本での購買力は維持できるという理屈だ。理屈の上では、米国株はインフレに強い資産なのである。

 米国株というと、日本株以上に銘柄選びが難しいと感じる人も多いであろうから、そういう人は投資信託(為替ヘッジなし)を購入すれば良い。投資信託と個別株の関係は、日本株投信についてと同様である。

 なお米ドル以外の外貨についても、インフレのリスクに関する限り、考え方は米ドルと同じである。

 もっとも、新興国通貨、特に高金利通貨と呼ばれているものについては、高金利であるにはそれだけの理由があるので、注意が必要だ。高金利通貨については、別の機会に詳しく記すこととするが、「リスクなく儲けることはできない」というのが投資の世界の大原則である、ということは肝に銘じておくべきだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。