注目が集まる
日本の半導体関連企業

 過去、ルネサスは、NECや三菱電機、日立製作所という母体組織の風土を一つにまとめることが難しく、国際競争力を高めづらい時期が続いた。

 しかし、今回の工場復旧への取り組みを見ると、取引先企業の協力も加わり、早期の生産再開を目指すという共通の目的に向かって組織が一丸となったことが確認できる。

 ある意味では、TSMCへの依存度の高まりによって世界的な半導体不足が深刻化し、経済と安全保障面での米国の危機感が高まった結果、世界トップのマイコンメーカーであるルネサスの重要性と根源的な競争力が確認されたといえる。

 ルネサスが競争力を発揮し長期存続を目指すために、足元の世界経済の環境は、かつてないビジネスチャンスをもたらしていると言っても過言ではない。

 同じことは、汎用型生産設備を用いて生産されるわが国のパワー半導体、セラミックコンデンサやシリコンウエハー、フォトレジストなどの半導体関連部材、半導体製造装置などの精密機械関連の企業にも当てはまる。

 そうした分野で世界的なシェアを持つ本邦企業(現地法人化されていない日系企業)は多い。わが国の半導体関連企業は、微細な素材や精緻なすり合わせ技術に磨きをかけることによって、米国からも中国からも必要とされる地位を、一段と高めることができるだろう。そのために、政府が安全保障面で米国との連携を重視することは不可欠だ。

 反対に、韓国の半導体企業にとって、米中対立の先鋭化がビジネスチャンスになるとは考えづらい。

 ソウル市長選などの結果を見る限り、経済面を中心に中国重視の姿勢を取り続けている文政権が米国との関係強化に政策方針を転換することは難しい。

 少し長めの目線で考えると、サムスン電子など韓国半導体産業は、日・米・台の連携強化への対応が難しくなる一方で、中国の半導体産業からの、強烈な追い上げに直面する展開が想定される。