製造業の本質は、技術の開発による「人々の新しい生き方の創造」にあるといえる。4月5日にモバイル事業からの撤退を発表した韓国のLG電子と、4月1日に社名を「ソニーグループ」へと変更し、次々と新たな技術を生み出しているソニー。2社の決定的な違いは何だったのだろうか?(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
韓国LG電子がモバイル事業撤退
最大の理由は?
4月5日、韓国のエレクトロニクス大手のLG電子(LG Electronics)は、7月末までにスマートフォン(スマホ)含むモバイル事業から撤退すると発表した。
一時、同社は世界第3位のスマホメーカーだった。今回の同社の決定の背景には、中国の競合企業との価格競争の激化によって、当該分野での生き残りが難しくなったことがあるとみられる。今後、LG電子は、モバイル関連の技術を次世代の高速通信や電気自動車(EV)などの関連分野に活用する方針だ。
LG電子は当初、スマホ事業の「売却」を目指したが、韓国メディアによると、売却交渉は思ったように進まなかったようだ。一部報道によると「LG電子が技術の流出を懸念したため売却が実現しなかった」との指摘がある。その一方で専門家の中には「LG電子が特別な技術を持っていなかったため、期待した買い手が現れなかった」とみる向きもある。いずれにせよ、最終的に事業の閉鎖が確定した。
LGがスマホ事業から撤退する一方、わが国ではソニーグループ(ソニー)などが、もう一段上の「モノづくり」の精神を生かすことで、中国企業などとの価格競争を回避する動きが目立ち始めている。
世界経済の環境が加速度的に変化する状況下、自力で新しい技術の創出を目指し、社会からより多くの支持を得られるか否かが、各国企業の中長期的な事業運営に、より重要性が高まっている。
目立った独自性を持たず、激しい価格競争に巻き込まれてしまうと、かつては世界のトップを目指した企業であっても、淘汰の波から身を守ることができないということだ。