次期大統領選控え、与党に衝撃
浮動票、保守に流れる

 ソウル市長選などでの与党の劣勢は選挙前から予想はされていた。

 都市中心部の地価高騰を文政権が解決できず、一般の市民にはマンションに手が届かない格差拡大に不満がたまっていた。

 ソウル市内のマンションの平均価格は文政権が発足した2017年5月時点で6億600万ウォン(約5900万円)だったが、昨年の時点で9億ウォンを突破している。

 そのうえ、選挙直前には、韓国土地住宅公社(LH)職員らが内部情報を元に不正投機をしていた事件が発覚、一握りの層が甘い汁を吸う不公平に不信が一気に高まった。

 朴候補は選挙戦の途中、選挙用に仕立てたジャンパーから党名を消したのも強い逆風を感じていたからだが、それでも、与党関係者は「負けるかもしれないが、5~10ポイント程度の差だろう」とみていた。

 18ポイント以上の差をつけられての敗戦に与党内にはショックが広がる。

 政権を支えるコアな進歩(革新)支持基盤が崩壊したとまではいえないが、不動産価格の高騰や社会不正の横行に嫌気が差した20~30代を中心とする浮動層が保守に流れたことが、保守大勝の大きな原因になった。

 与党「共に民主党」では選挙結果を受け、執行部が総退陣し、来年3月に迫る大統領選に向けて体制立て直しを迫られる。

 大統領候補の一人で、選対委員長を務めていた李洛淵(イ・ナギョン)元首相は今回の大敗で、候補に選ばれるには相当、苦しい状況に追い込まれた。

 現在、与党系で一番の支持を集めているのは李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だが、李氏は「韓国のトランプ」というニックネームをつけられたほど、型破りな言動で知られる。

 文派(ムンパ)あるいは親文(チンムン)と呼ばれている文大統領支持の党内主流派は、李氏には距離を置いており、別の候補の擁立を模索するとみられる。

 野党側もいまのところ有力な候補が出てきていない。与野党は今秋に大統領選候補者を決めるが、候補者選びと並んで、レームダック化が避けられない文政権が残る任期中、大統領選での与党勝利に向けて何に取り組むかにも注目が集まる。

 現時点では国民の関心が高いのは、新型コロナウイルスの感染拡大防止や経済政策だが、韓国国内だけでなく日本や米国でも注視されているのが、このところの「中国への接近」の動きだ。