また、当然足場は頑丈に作られているので、そう簡単に壊れて買い替えるものではない。そこでタカミヤは、2010年にIqシステムの普及を目的にした「工事部」という部門を新たに立ち上げたという。

「工事部は、一事業者として足場工事の受注と施工管理を行う部門です。当社が受注した現場ではIqシステムを使用するので、職人さんたちに実際に使ってもらえます。工事部設立時には、私たちと同じように現場での事故撲滅を目指すとび工事会社と協力会を結成しました。同じ志を持つ大切なパートナーです」

 現場でIqシステムを使うと同時に、タカミヤ工事部の受注数が増えれば、市場にも浸透させられる。

 足場のリース会社が発注元になるというチャレンジングな方法だったが「使ってもらえば、Iqシステムのメリットを実感してもらえるという自負がありました」と、川上氏は語る。

「実際に使った職人さんたちからは、高い評価をいただいています。『腰が痛くない』とか『頭がぶつからない』といったコメントや、ひとつの現場でビティ枠、Iqシステム、高さ180cmという3種類の足場を使った人が、Iqシステムに最も高い評価を付けてくれました。現場の声は本当に励みになります」

 現在、各関連事業者が保有している足場数は、従来の枠組み足場・次世代足場を合計して約10000万平米、そのうちIqシステムが占めている926万平米と見られている(※2021年3月期四半期時点、仮設工業会調べ)。全体の1割ほどだが、年々シェアを拡大しているという。

「これからもメーカーとして、現場の人々がより快適に働ける環境づくりを目指します。今後は、現場の機械化にも力を入れていく予定です。機械によって職人の負担を減らすことができれば、人手不足も解消され、休みや給与も安定して事故も減らせる。建設業界全体の課題解決につなげていきたいです」

 建設業界の問題に切り込む異端児、タカミヤの挑戦はこれからも続きそうだ。