遺言書は何度でも書き直すことができると述べたが、「自筆証書遺言」を預かる法務局の保管手数料は1件3900円。「公正証書遺言」を預かる公証役場の保管料は無料だが、公正証書遺言の作成費用が手数料令という政令で定められている。公証人手数料令は目的となる遺産額に応じて以下の通り。

※参考:日本公証人連合会「公証事務 ~1 遺言」

 また、公証人役場で証人紹介を頼めば、証人1人につき6000円程の手数料を要し、証人への謝礼も必要となる。遺言者が30~40代なら、住宅ローンや教育ローン返済中ということもあるだろうし、財産額もまだ定まらない場合も多いだろう。遺言書の書き換えのたびに出費では、確かに痛い。

 遺言書の内容が決まらないうちは、エンディングノートを作成するという方法もある。エンディングノートも遺書同様、法的効力はない。しかし、財産目録も含めておけば、遺産分割協議の参考にはなる。パソコンで作成すれば、財産目録の修正・変更も楽だし、自身の財産管理にも役立つ。

 最後に、話を『くれなずめ』に戻そう。

 あのストーリーは、松居大悟監督の実体験がもとになっているそうだ。そもそも演劇のために作られたのでシュールな演出もあったが、あの妙にリアルな感情の浮遊感はそのためかと思った。友人の死に揺れる仲間同士の関係が、少々うらやましくもあった。