東海道・山陽新幹線の車両と
九州新幹線との違い

 相互直通運転を支えるのは、全線開業に合わせて製造した8両編成のN700系車両だ。JR西日本に所属する「S編成」が19編成、JR九州に所属する「R編成」が11編成の計30編成240両が山陽・九州新幹線直通列車「さくら」「みずほ」を中心に走っている。

 今回、相互直通運転開始10周年を記念して当時、車両開発に携わったJR九州の運輸部車両課(当時、運輸部車両課新幹線PJ)清松克彦氏、JR西日本の車両部車両設計室課長代理(当時、車両部車両設計室)山下光太郎氏、博多総合車両所車両科助役(当時、同)神田隆太郎氏に、車両に込めた思いを聞くことができた(以下、敬称略)。

――直通車両の開発はいつ頃始まったのでしょうか。

山下 2006年頃から基本仕様などの策定に着手し、2007年頃から本格的な設計が始まりました。JR西日本は東海道・山陽新幹線で使われている16両のN700編成の経験があるということで、まずJR西日本とメーカーで勉強会を行い、設計に着手する段階からJR九州に入ってもらいました。

――東海道・山陽新幹線のN700系とはどのような点が違うのでしょうか。

山下 ベースはN700系ですが改良点は多く、急勾配に対応するため(16両中14両にモーターが付いている東海道・山陽新幹線のN700系に対し)8両全てにモーターを付けたことや、16両編成を8両編成にするためパンタグラフの位置や床下機器の構成が変わっているなど、走行装置にも違いが多くあります。機器の熱の変化がどのように起こるかなどシミュレーションを重ねながら、システム的にどういうふうに組み合わせていけばいいか慎重に検討しました。

清松 これまでのJR西日本の新幹線にはなかった要素としては、鹿児島には桜島など火山が多いので、火山灰の粉じん対策もやってもらっています。