九州新幹線の
次の10年に向けた思い

――同じN700系とはいえ、かなりオリジナリティーの高い車両ですね。

神田 その他にも、2カ所並んだ洗面所のひとつは女性客を意識してパウダールームとしました。姿見を設置し、ライティングにもこだわっています。また客室ドア上に設置された、案内テロップが流れる車内表示器についても、客室にこだわったのに、そこだけ機械的な印象になるのを避けるため、黒いフィルムを貼り、何もないところに文字が浮き上がるような演出にしています。

――相互直通運転の開始から10年を振り返っての思いは。

山下 2列+2列の座席は非常に好評だと聞いています。コロナが始まる前までは新幹線の収益は伸びていたので、少なからずこの車両の貢献は高いと思います。

清松 身の回りでも大阪に出張に行くときは、のぞみではなくさくら・みずほを選んで乗っているなど、携わった人間からすると非常にうれしい話をよく聞きました。

――次の10年に向けた思いを聞かせてください。

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神田 九州新幹線の流れ星新幹線を見て非常に感動しました。さすがJR九州だなと思いました。私も人に感動を与えられるような車両を造っていきたいと思っています。新幹線開業にあたってはいつも地域の盛り上がりを感じます。暗い社会の中、少しでも明るいニュースを提供できるようにと思っています。

山下 安全と信頼と快適と技術をキーワードになると思います。過去、新幹線でもさまざまな不具合や事故、インシデントがありましたが、安全性はさらに追求しなければなりません。いろいろな不具合をすぐ発見できる機能も追加しなければならないと思っています。またWi-Fiや荷物置き場の設置などニーズの変化に対応していく必要があると感じています。

清松 JR九州が走らせているD&S(デザイン&ストーリー)列車との接続を踏まえたデザインを導入し、新幹線に乗って九州に来て、そこから在来線に乗ってもらうようなつながりのある車両を造っていきたいと考えています。