右上がり組に入るための条件
(2)流動化率=転職可能性で測る

 作業的労働者の賃金が上がりにくいのは、「代わりが多数いる」からだ。雇う側が雇われる側を選べる状況では、雇われる側の経済条件は改善しにくい。逆に、雇われる側が雇う側を選ぶことができる状況なら、賃下げに対して抵抗力があるし、条件改善のための交渉も可能だ。

 知的な労働に従事する人も、自分がどの程度強い条件で働いているのかを把握しておく方がいい。自分の雇用の流動性を知っておきたい。現状と同条件以上でいくらでも転職できる勤労者は、会社との軋轢(あつれき)を恐れる必要はないし、経済的な条件の交渉にあっても有利だ。

 逆に、低所得に陥って持ち家を手放す人がいるように、減収や解雇の憂き目に遭ったときに、他の収入・雇用を確保できない勤労者は弱い。

 自分の潜在的流動性の確保は、K字の「右下がり組」に転落しないために重要なポイントだ。

 自分がどの程度流動性を持っているのかについては正確に数値化できるものではないが、転職の可能性で測るのがよかろう。

 具体的には、「あと3カ月で解雇されると仮定した場合に、3カ月以内に現在の収入と同等以上の雇用機会を獲得できる確率」を想像してみよう。

 3カ月あれば間違いなく今以上の就労機会が得られると思える人の「流動化率」を100%と定義しよう。得られるかどうかは「全く五分五分だ」と思う人で50%だ。他の条件にもよるが、「右上がり組」に入るためには、50%以上は欲しいところだ。