認知症など高齢者のリスクは多岐にわたる

 上記にかかわらず、高齢者が全財産を預金で持つことが合理的だと考える理由もある。それは、認知症などによって、自分の金融資産が自由に動かせなくなる可能性を考えた場合だ。

 資産運用をしていると、それを解約して生活費に充当するためには、金融機関などに対して、「持っている投資信託を解約する」などの意思表示をしなければならない。だが、認知症などによってそれが容易でなくなると、老後の生活費に問題が生じかねない。

 預金の引き出しであればまだ容易であるし、あらかじめ家族カードを作っておけば、それを使って家族が自分のために買い物をしてくれたり、老人ホームの費用を払ってくれるかもしれない。

 そこまで考えた上で「やはり老後資産は銀行預金で持とう」というのであれば、やむを得ないが、それでも言いたいことはある。

 たとえば数百万円は株や外貨など、インフレに強い資産で持とう。その分は、遺産として相続され、葬儀費用に充当されるので、インフレで葬儀費用などがかさんでしまっても、遺族に迷惑がかからないように、という趣旨だ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。