つまりここにある夫婦関係は、相互に独立した個人としての男女関係ではなく、非対称の依存関係としての「母子関係」である。

 この点で最近、心理学者の信田さよ子さんが、日本のDV加害者の男性の特徴について、面白いことを指摘している。

 すなわち、北米の男性の場合、妻への嫉妬がDVの引き金になっている例が多いのに対して、日本では妻が他の男性に惹(ひ)かれることなど考えもしない例が多いという。

 ようするに、「日本の男性は妻を女性としてではなく、『自分を分かってくれる存在=母』としてとらえている」ことがDVの根底にあるのではないか、というのだ。

 もちろん「母子関係」がすべて悪いわけではない。しかし、夫婦の関係で「自分を分かってくれる存在」といった「母子関係」を要求される女性にとってみれば、それは強制であり抑圧でしかない。

 夫婦関係では女性は男性より「強い」ように表面上見えるが、ここにあるのは、一方的に「母親の役割」を強制されるいびつな女性差別の構造なのだ。

 とくに男性にとって、この差別的構造はきわめて自覚しにくい。

女性役員比率と業績に相関関係
見方や考え方の多様化で活性化

 では、たとえば企業での男女差別や格差をなくしていくにはどうすればよいのか。

 職場も一つの「世間」である以上、そこでも女性差別が構造化されている。

 この状況を変えるには、日本では差別が見えにくい構造があることをよく自覚し、すみやかにジェンダーギャップを埋める具体的な方策を講じる以外にない。

 BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の報告書(2017年)によれば、日本企業における女性役員の割合は、ノルウェー36%、フランス30%、イギリス23%、アメリカ・ドイツ・オーストラリア19%などと比較して、わずか3%と著しく低い。

 興味深いことにこの報告では、東証一部上場904社を調査し、「日本企業の女性役員比率と企業業績には相関関係が見られる」と結論づける。

 つまり女性役員を増やすことで企業業績が上がる。それは、「ものの見方や考え方が多様化することで、企業が活性化し、イノベーションが加速する」からだという。

 当然といえば当然の話だ。

 これは一つの例だが、政治のかかげる「女性活躍推進」がレッテル詐欺にならないためにも、女性の管理職を増やすなどの実効的な手立てを、躊躇(ちゅうちょ)することなく実施することが必要だ。