半導体2大ファウンドリーである台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の業績は堅調に推移している。ただ、中長期で考えると、最先端技術と生産能力の向上に取り組むTSMCとサムスン電子の競争力格差は広がる可能性がありそうだ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
半導体争奪戦は3年続く
日本企業にとって正念場
世界的に半導体の不足が深刻だ。2018年春以降の米中対立や、5G投資の盛り上がりで需給がタイトになったことに加えて、想定外の日米の半導体工場の操業停止などにより、“半導体争奪戦”の様相を呈している。米インテルのパット・ゲルシンガーCEOが「需給ひっ迫の解消には2~3年かかるだろう」と述べるほど、事態は深刻だ。
そうした状況下、各国企業が台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子などからの半導体確保を急ぎ、半導体の市場価格は上昇している。当面、世界の主要メーカーであるTSMCやサムスン電子などの業績は堅調に推移するだろう。ただ、やや長めの目線で考えると、最先端の半導体生産能力の向上に取り組むTSMCとサムスン電子の競争力格差は広がる可能性がありそうだ。
半導体争奪戦は、ある意味では、わが国の半導体部材メーカーなどにとって追い風になる可能性がある。わが国企業は半導体の製造装置や主要部材のサプライヤーとして、世界的にしっかりしたポジションを持っているからだ。
重要なポイントは、今後、その地位をさらに高め、収益性を確保できる事業展開を目指すことだ。そのためには企業の取り組みだけでなく、政府が積極的に規制改革や企業の研究開発支援を推進することを考えるべきだ。それができないと、有力なビジネスチャンスを逃すだけではなく、中長期的なわが国経済の成長を実現することは難しくなる。ある意味では、わが国にとって正念場が来ているといえるだろう。