コロナ禍でソーシャルディスタンスがさけばれる中、人々の暮らしも大きく変わった。そうした影響をとりわけ大きく受けているのが、一人暮らしの高齢者である。今回は家賃未払いのトラブルを抱えていた高齢男性のケースを紹介する。(司法書士 太田垣章子)
※本稿は書籍『不動産大異変 「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ新書)の内容を一部抜粋・再編集しています。
新型コロナウイルスは、人々のリアルな触れ合いを規制しました。ソーシャルディスタンスが求められ、仕事ではリモートが推奨され、イベントやコンサートも一時は中止。オンライン飲み会という言葉も生まれました。
ひとりで飲むよりは、画面上であったとしても人と話しながらお酒が飲める。意外と楽しいものだと、知った人も多かったと思います。ただしそれが高齢者となれば、どうでしょう? 技術的にオンラインで人とコミュニケーションを取れる人がいったいどれだけいるのでしょうか。
例えばオンライン飲み会一つをとっても、若い家族がパソコンやインターネットのセッティング等をしてくれれば、新しいことにチャレンジもできます。けれども誰にも教われず、パソコンやスマホも持たない人たちは、やりたくてもできません。そもそも「オンライン飲み会」という言葉すら、知らないかもしれません。
こうして孤独な高齢者は、ますます孤立を深めていったのではないでしょうか。
家賃を払わなくなった70代男性
家賃なんて払うもんか、と公言する内田洋平さん(仮名)という73歳の男性がいました。内田さんは、大工として50年以上働いてきました。今もなお現役です。お金がない訳ではないのです。職人気質の内田さんは筋の通らないことは許せない、と家賃を拒否し始めました。いったい何があったのでしょうか。