最強の投資術#13Photo:VCG/gettyimages

日本に残された、数少ない国際競争力のある産業が半導体製造装置メーカーだ。連続最高益更新、株価も右肩上がりの企業がそろうが、死角はないのか。特集『決算直前 米国&日本 最強の投資術』(全13回)の最終回では、半導体製造装置メーカーの今後の見通しを楽天証券経済研究所チーフアナリストの今中能夫氏が解説する。

5Gスマホ、高性能PCが好調で
先端半導体分野の需要が拡大

 半導体の需要が旺盛だ。5G(第5世代移動通信規格)スマホ、アップルのM1(自社製高機能チップ)搭載パソコンのような高性能パソコン、高性能サーバー向けの先端半導体から、自動車、家電、産業機器向けの汎用半導体まで、半導体不足が起きている。

 底流にあるのは、最終製品が強いことである。5Gスマホが好調で、巣ごもりが続く中で高性能パソコンが再評価された。結果として、データセンター投資も増加している。「スマホ普及が落ち着いたら半導体需要は一服する」という予想をしていた専門家もいたが、その予測は外れたことになる。

「半導体サイクル」という言葉があるように、以前の半導体は好不況により業績が大きく変動して、まさに天国と地獄だった。だが直近は、サイクルはあっても底が浅くなっている。

 前回のブームはかなり大きなサイクルになった。前回から今回のブームにかけての実需の底は2019年春で、株価の底は18年の年末であり、業績も株価も大きく下振れした会社が出たが、サイクルが大きかったため多くの企業が赤字にならなかった。

 今回のサイクルは前回よりもさらに大きなサイクルとなろう。今後は動画配信などエンターテインメント分野の市場も拡大する。動画配信が4Kになると、データ需要が激増するからである。高画質志向が本格化すると、回線容量、データセンターに多額の投資が必要になる。

 半導体の微細化の単位は、今はナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)だが、スマホや高性能パソコンに使われる先端半導体は10ナノメートル以下で、来年は3ナノメートルの生産が本格化する。自動車は40ナノメートルなどの汎用品が使われているが、完全自動運転になると1桁ナノメートルが必要になる。

 では、日本の半導体関連企業はどうか。実は日本は半導体デバイスでは負け組だが、半導体製造装置では強さを維持している。問題は、今後もその地位をキープできるのかどうかだが、次ページで具体的に見ていこう。