国内外の株式相場の動向を占う上で今、最も注目されているのが米長期金利の行方だ。これについて、日本の金利動向と併せ、専門家5人にアンケートを実施。特集『決算直前 米国&日本 最強の投資術』(全13回)の#11では、年内や中長期的にどう動くかの見通しを明らかにするとともに、なぜ金利が上がると株価が下がりやすいのか、そのメカニズムをひもといた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
投資家が固唾をのんで見守る最大の注目材料
「金利」の急上昇は株式市場の大逆風に
世界中の株式投資家が今、固唾をのんで見守る最大の注目材料がある。それは「金利」の行方だ。
中でもグローバルな金融市場への影響が大きいのが、米国の長期金利(10年物国債の利回り)。この急上昇が逆風となり、それまで最高値更新を続けるなど順風満帆だったダウ工業株30種平均が2月下旬、2日間で1000ドル超も下げ、冷や汗をかいた個人投資家も少なくないはずだ。
振り返れば米長期金利は、新型コロナウイルス感染拡大前の昨年初時点では2%近くあったのだが、コロナ対策としてFRB(米連邦準備制度理事会)が大規模な金融緩和を行った影響などで急低下。昨夏には0.5%程度まで沈んでいた。だが、ワクチン接種拡大による景気回復期待などを受け、直近では一時1.7%程度まで急上昇。これが、長らく上昇基調にあった米ハイテク株などに冷や水を浴びせる形となったのだ。
足元では1.6%程度の水準で、上昇はいったん落ち着いている。歴史的に見れば低水準だが、裏を返せば、上昇の余地は大きいともいえる。アフターコロナに向けた景気回復局面の中で、金利上昇につながるインフレ観測がくすぶる環境は続くだけに、まだまだ株式投資家の関心は金利の行方から逃れられないというわけだ。
そこで今回、ダイヤモンド編集部は国内外の金利動向に詳しい専門家にアンケートを実施。機関投資家が選ぶ2021年の債券アナリストランキングで首位となったSMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジスト、『No.1エコノミストが書いた世界一わかりやすい金利の本』などの著作があるみずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストら5氏に、米国と日本の長期金利が年内、さらに中長期でどう動くか展望してもらった。
また、日々のニュースなどでは「長期金利上昇が株価の重荷となった」といった記述を目にするかもしれないが、そもそもなぜ金利が上昇すると株価が下がるのかご存じだろうか。これについて、株価を構成する二つのキーワード、EPS(1株当たり利益)とPER(株価収益率)との関係から解説していこう。