個人投資家に人気の小売り&外食業界。ファーストリテイリング、ニトリホールディングスなどエポックメイキングな大化け企業が誕生する業界でもある。ただし、足元の事業環境は厳しく、コロナ恩恵企業も安泰ではない。昨年は旅行消費が16兆円減少しており、そのうちの少なくない部分がモノ消費に回ったからだ。特集『決算直前 米国&日本 最強の投資術』(全13回)の#10では「消費者としてのアンテナ」を研ぎ澄まして、中長期で伸びる小売企業を発掘するためのヒントをお届けする。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
景気に左右されずに中長期で伸びる
エポックメイキングな企業を探せ
「外食の優等生が債務超過に転落」――居酒屋を含む多業態の外食を展開するDDホールディングスの2月期決算は、前々期の28億円の営業黒字から一転、97億円の営業赤字を計上。自己資本比率がマイナスとなり、債務超過に転落した。
DDホールディングスの3月の既存店売上高は前々年同月比36%。2022年2月期は黒字回復を見込むが、苦しいスタートとなった。3度目の緊急事態宣言の発令も追い打ちをかける。
苦境にあるのは同社だけではない。2月決算企業は小売りや外食など新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した業態が多いが、特に居酒屋やアパレル、百貨店が厳しかった。
昨年秋にかけては回復傾向だったものの、年末以降、コロナの感染者数が再び増加。居酒屋は忘年会シーズンの書き入れ時に稼げなかった。都市部のコンビニや量販店が落ち込むなど、立地による明暗もあった。
百貨店は高島屋が340億円の最終赤字を計上。経費削減と下期急回復計画で黒字予想だが、緊急事態宣言の発令で出鼻をくじかれ、先行きには不透明感が漂う。
ただし、小売りや外食業界の全てに逆風が吹いたわけではなく、「巣ごもり需要」の恩恵を受けた業態も多い。
「好調だったのは食品スーパー、家電量販店、ドラッグストア、ホームセンター、通信販売など。自宅で過ごす時間が増えたことで新たな需要が生まれました」(マネックス証券の益嶋裕マーケット・アナリスト)
コロナの感染者数が増加した昨年春から、コロナ恩恵組と直撃組の顔触れは変わらず、業績格差も縮まっていない。秋以降はワクチン普及に期待できそうだが、コロナ苦戦組の逆襲はあるのか。
クレディ・スイス証券の風早隆弘シニアアナリストは厳しい見方を隠さないが、エポックメイキングな(新しい時代を画するような)企業が出る局面でもあると指摘する。
「前期の小売業は、晴天組と土砂降り組に大きく分かれました。今後は晴天組が曇りから小雨に、土砂降り組は最悪期こそ脱したかもしれませんが、引き続き雨が降っているような状況。雨後晴れにはならないと想定しています。コロナ前に戻れる会社は非常に限られると考えています。
一方で、事業環境が厳しいときは、エポックメイキングな企業が登場する局面でもあります。例えば、過去の個人消費の低迷時にも、ニトリやワークマン、ファーストリテイリングなど、消費者の需要を捉えて中長期で株価が大きく上昇する企業が登場しています」
次ページ以降で具体的に見ていこう。