米軍司令官「6年以内に軍事行動」
中国の台湾進攻はあるのか

 米国のインド太平洋軍司令官に4月30日就任したジョン・アキリーノ海軍大将は、3月23日の上院軍事委員会で、「中国の台湾侵略は思いのほか早く来ると考える。6年以内に軍事行動を起こす可能性がある」と述べた。

 軍人は予算獲得のためにえてして「危機」を唱えがちで、「毎度のこと」とも思えるが、米国内での反中国感情の高まりを考えると、武力紛争になる可能性を完全に否定はできない。

 中国は、実利主義者で「走資派」(資本主義者)といわれた鄧小平氏が1978年に実権を握り、市場経済への転換と海外からの資本、技術の導入など改革開放を推進した結果、40年余りでGDP(国内総生産)は米国の70%を超えた。2028年には米国をしのぐとの予測も出ている。

 これに対し米国人の間で反感や危機感が強まるのは不可避だろう。

 1980年代から90年代にかけて巨額の対米貿易黒字をあげ、高度成長をする日本に対して、米国では「日本が不公正な行動をしているからだ」として「ジャパンバッシング」が広がり、日本製の車や電化製品をたたき壊し、日章旗を焼くなどの集会が頻発した。

 対日戦争を予想する本が出版され「Nuke Japan」(日本核攻撃)のステッカーを貼った車が走り回ることもあったが、いまの反中感情の高まりはその当時を思い起こさせる。

 2017年に就任したトランプ前大統領は国民の反中感情をあおり、WTO(世界貿易機関)の協定を無視して、中国からの輸入品への高率の関税やファーウェイなどの中国企業の規制や幹部の入国制限など、「貿易戦争」を仕掛け、それに対して中国は報復措置を取った。

 結果は、2017年から昨年の間に中国の対米貿易黒字がむしろ15%も増え、貿易戦争で米国の敗色が濃い。

 さらにコロナ禍で米国の昨年のGDPは前年比マイナス3.5%と大きく落ち込むなど主要国が軒並みマイナス成長だったのに対して、“新型コロナウイルス発生国”の中国だけがプラス2.3%の成長だったことも、反発を大きくした一因だろう。

 コロナ対策で米国の2020年度の財政赤字は前年の3.2倍の3兆1000億ドル、GDPの15.2%に達し第2次世界大戦後最大となった。

 日本の財務省が昨年5月に発表した各国・地域の純債権(他国との賃借)では、日本が最大の債権国で364兆円、ドイツが299兆円、中国が231兆円、香港が170兆円の順だが、米国はマイナス1199兆円の借り越しで最大の債務国だ。

 バイデン政権は大型コロナ対策に続き、2兆ドルのインフラ投資策などを打ち出している。それによって米国が経済力でも覇者の地位を今後も保てればいいが、うまくいかないと、なお圧倒的に優位にある軍事力に頼り国際政治での影響力を駆使して、中国が覇権国になるのを阻止しようとする方向に進みかねない。