Quadを「アジア版NATO」に
インドは米国一辺倒にはならず?

 米国は日本、インド、オーストラリアと4カ国の連携(日米豪印戦略対話、Quad)でNATOに似た対中包囲網を形成しようとして共同演習も行っている。

 しかし米国の思惑通りに進むか否か疑問がある。

 インドは冷戦時代には非同盟政策を堅持し、米国はそれを「不道徳」と非難、インド・パキスタン戦争では空母艦隊をベンガル湾に入れ、インドを威嚇するなど、パキスタンを支援した。

 このためインドはソ連に傾き、中古の空母や原子力潜水艦、新鋭戦闘機などの装備をソ連から輸入した。

 ソ連崩壊後のインドは米国に接近する姿勢を示しているが、対空ミサイル「S400」を米国の反対を無視してロシアから導入し、操作要員もロシアで訓練するなど、米国だけに依存しないように巧妙な政策をとり続けている。

 経済関係でも2018年のインドの輸出の9.1%、輸入の14.5%は香港を含む中国との取引だ。

 インドが米国追随一辺倒になるかは怪しい。

 オーストラリアは18年の輸出の34.1%が中国向けだ。中国が鉄鉱石などの資源の買い手であり長く親中的だったが、近年、中国の富裕層が多く移住し、高級住宅を買いあさっていることなどへの反感が強まっている。

 コロナ禍で豪政府が中国に対してウイルス感染などの情報開示を求めたのに対して、中国が豪州からの輸入規制を実施、いまは豪中関係は最悪の状況といえよう。

 だが軍事的には、オーストラリア軍は、陸軍2万9000人、戦闘機89機、やや旧式の潜水艦6隻、駆逐艦2隻、フリゲート8隻という小規模な軍隊で、米国が中国と対抗する際あまり役立つとは思えない。

 英、仏、独などもインド・太平洋に空母などを派遣し、米国に協調する形を示しているが、これは常時配備されるわけではなく、顔を出すお付き合いにすぎない。

 結局、米国が中国との対決で期待をかけられるのは、陸上兵力15万人、戦闘機330機、潜水艦22隻、軽航空母4隻を含む水上艦51隻を有する自衛隊となる。

日米防衛協力の指針で
武力行使受けずとも参戦の可能性

 日米間では 2015年4月に改定された「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ)で、「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」での日米共同対処を定めている。

 その中で、「日米両国が各々米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため……国際法、憲法、国内法に従い武力行使を伴う行動を決定する場合、日本が武力攻撃を受けるに至っていないとき、日米両国は武力攻撃への対処及び更なる攻撃の抑止において緊密に協力する……日米両国は武力攻撃への対処行動をとっている他国と適切に協力する」とされている。

 日本が攻撃を受けていない場合でも、米国や他国が攻撃されれば、日米は緊密に協力して共同対処することが決められている。