尖閣諸島の防衛では
米軍は矢面には立たない

 一方で日本では、政府が長年「集団的自衛権の行使は憲法違反」としてきた解釈を安倍政権時代に閣議決定で変更した先例もある。

 これらを考えると、憲法も日本の参戦をとどめるブレーキには必ずしもならず、米国に従って参戦することも起こりかねない。

 仮に米中が武力衝突という事態になれば、尖閣諸島も衝突の場となり得る。

 日本では「日米同盟強化で、米軍が尖閣諸島の防衛に当たってくれる」と言う人が多い。

 だが、日米防衛協力の指針では、「自衛隊は島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する……米軍は自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」と定めている。

 つまり米軍は地上戦の矢面に立つことはないことが明記されているのだ。

中国にとって台湾侵攻は簡単ではない
米中衝突は双方に打撃と犠牲

 米国にとって日本領の無人島はごく小さい問題で、台湾が中国との武力衝突になり得る一番の焦点だ。

 もし台湾が独立を宣言し、米国、日本などが国家として承認すれば、中国政府は国内での威信にかかわるから台湾を攻撃するかもしれない。

 だが、台湾政府の大陸委員会が昨年11月に行った世論調査では「現状維持」に賛成する台湾人は86.7%で、「すみやかに独立」を求める人は5.0%だった。

 中国の威嚇に反発する人は93%だったが、台湾の輸出の44%が大陸向けで、海外投資の約60%は大陸にあるといわれる。

 台湾海峡の両岸には緊密な相互依存関係が成立しているから、公然と独立して紛争が起こるよりは、あいまいな現状を当面続けることが利益になると、現実的に考えている人が多いことを示している。

 中国にとっても、台湾に侵攻し軍事的に抑え込むことは簡単なことではない。 

 中国は4月に、陸兵1700人と装備を運べる3万5000t級の揚陸艦「海南」を就役させ、さらに2隻を建造中だ。他に比較的新しい揚陸艦14隻を持つが、それらを合わせても運べる兵員は1万3000人程度だ。

 第2、第3波として商船、漁船を動員して侵攻しても、台湾陸軍8万8000人と海兵隊1万人を制圧するだけの兵力を投入するのは容易ではない。